2023年2月には、福井県池田町の広報誌やホームページに掲載された表現に批判が相次いだ。「池田暮らしの七か条」と題した移住者への提言には、「これまでの都市暮らしと違うからといって都会風を吹かさないよう心掛けてください」「多くの人々の注目と品定めがなされていることを自覚してください」と記載されていた。
2022年12月にYoutubeで公開された「【移住失敗】色々ありすぎて引っ越すことになりました」では、山奥での自給自足的な生活がしたいことから、東京を離れ地方へ移住し、住民関係の悪化などから移住先を去る内容を紹介。同動画は、2023年5月9日時点で400万回再生を超えている。
前出のふるさと回帰センターの高橋さんによれば、「地方移住を促進させるため、お金は確かに必要だが、移住者と地域住民が交流できる場など、移住者の今後のために使わなければ。そもそも、何をテーマに移住するかが一番重要です」と指摘する。
「どんな目的で移住をするのかをちゃんとヒアリングして、その人にあった移住先をご案内するようにとセンターの相談員には伝えているんです。支援金目的で移住したって、本末転倒ですから。どうしたら自分の人生が豊かになるのか。そんなサポートをしたいです」(高橋さん)
行政からもこんな声が聞こえてきた。
人口約11万人の滋賀県長浜市で、移住政策を手がける市総務部政策デザイン課の安藤和人氏は「支援金をばらまいて移住者の取り合いをしても仕方ない」と話す。
「人っていろんな生き方があって、最適な人生を送っていただくというなかで、長浜市を選んでくれたらうれしいです。都会に比べて間取りが大きいですし、自分の好きなことができる場所を持てる。琵琶湖にも面していて、釣りやカヤック、ボートなどで遊べて、余暇を楽しめることがウリです。私たち行政が移住者をサポートして、地域住民との交流の場を設けることができたら」
実際に長浜市は、JR長浜駅直結の複合商業施設「えきまちテラス長浜」で、コワーキングスペースを設置するほか、住民との交流を目的としたイベントを企画している。同施設は、同市の第三セクター「えきまち長浜株式会社」が運営している。
「移住先が自分に合うかどうかは、徹底的に調べて、探された方がいいと思います。都心へのアクセス、地域性、居住環境などは、かなり重要な要素ですから。人生の大きな決断でもあるので、補助金を目的として移住先を選ぶのはかなり危険だと思います」
(AERA dot.編集部 板垣聡旨)