条例に基づいてバーベキューを禁止している川崎市の多摩川緑地
条例に基づいてバーベキューを禁止している川崎市の多摩川緑地

 しかし、その一方でモラルも低下。ごみの大量投棄や花火の騒音など、近隣住民にとって大きな問題となっている。

 特に深刻だったのが、東急電鉄の二子新地駅から近い二子橋(神奈川県川崎市高津区)付近。「ごみや騒音は相当ひどかった」と藤枝さんは振り返る。

 川崎市は2011年、市が管理する河川敷でのバーベキューを規制する一方、二子橋のとなりに「多摩川緑地バーベキュー広場」を開設。使用料を徴収し、ごみ処理などにあてる仕組みをつくった。対岸の東京都狛江市も12年、占有する環境保全区域内でのバーベキューを禁止する条例を施行した。

■「自由使用」の原則

 規制のかけられた場所が広がる一方、多摩川の河川敷には誰もが利用できる「公共の空間」もある。国交省が管轄する場所だ。ここでは「河川の自由使用」の原則が適用され、誰もが釣りや散歩、水遊び、バーベキューなどに利用できる。

 藤枝さんが説明する。

「公園やグラウンドでない多摩川の河川敷は、基本的に国交省が管理しているところと思っていただいて結構です。迷惑をかけない範囲で自由に使っていただきたい、ということで、バーベキューも禁止していません。

 ただ、コンロを使用しない『直火』はやめてほしい、と言っています。地面に直接、炭やたきぎを置いてバーベキューをすると、草などに燃え移ってしまう可能性がありますから」

 また、多摩川にかかる橋の下の河川敷の多くが、バーベキュー禁止になっていないという。鉄道橋なら鉄道会社、道路橋ならば道路の管理者が橋の下の土地を管理しているが、藤枝さんは「必要であれば橋梁管理者が禁止にできますが、自治体が管理する場所を除けば、実際のところ、禁止にしているところはありません」と言う。

 バーベキューの後に大量のごみが放置されがちな場所は、このように規制がかけられていない、誰もが使える「公共の空間」が多いという。

 国交省京浜河川事務所が管轄する、多摩川河口から東京都青梅市の万年橋までの64.3キロの間には、バーベキューをする人が比較的多く見られる場所が10カ所ほどあり、そのうちの5カ所が川崎市高津区から同市多摩区までの約10キロに集中しているという。

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整備されたバーベキュー場