多摩川にかかる小田急線の狛江市側の鉄橋の橋脚には、「バーベキュー、花火等を終日禁止」と大きく書かれていた。また、川崎市が野球場やサッカー場を整備している「多摩川緑地」でも、「バーベキュー禁止」の看板が目についた。
しかし、バーベキュー禁止を呼びかける看板が近くにある場所で、川のせせらぎを耳にしながら、ゆったりとバーベキューを楽しむ家族連れや女性のグループと出会った。この場所を京浜河川事務所に確認すると、国交省が管轄する、いわゆる「公共の空間」であるとのことだった。
「今日は友だちといっしょに来ました。家がすぐ近くなので、歩いて来られるんです。しょっちゅうというわけではありませんが、時間ができるとバーベキューを楽しんでいます」と、女性たちは口をそろえて話した。
今回、河川敷を歩いてみたが、バーベキューが特に規制されていない場所も含め、バーベキューをした人が残していったと思われるごみは、まったく目にしなかった。
藤枝さんは、こう語る。
「基本的に河川敷は公共の土地ですから、マナーを守ってバーベキューを楽しんでいただくのはかまいません。ただ、一部の利用者によるごみや騒音、煙などで困っている実情があります。コンロを捨てていったりするような人もいるわけです。地元の方から『バーベキューを禁止にしろ』と、きついお言葉をいただくこともあります」
バーベキュー場や社会実験を行っているエリアは有料なので、それを嫌う利用者が、規制のかけられていない国交省管轄の場所に分散している可能性もあるという。
「そのへんは、いたちごっこになってしまっています。問題が悪化すれば、バーベキューを禁止せざるを得なくなります。なので、くれぐれもマナーを守っていただきたいと思います」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)