5月19日から始まったG7広島サミットに臨む岸田文雄首相の頭の中には、その後の衆院解散までの道筋も描かれているのだろう。内閣支持率も回復基調にある今、国会会期末の解散も現実味を帯びてくる。岸田首相の動きをどう見るか。政治ジャーナリストの安積明子氏が解説する。
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「私が会長を務める宏池会(岸田派)はハト派、清和会(安倍派)はタカ派と言われていた。たしかに先輩たちの時代には、こういう呼び方は大きな意味を持っていた。しかし、歴史の転換期を迎えている今、こうしたレッテル貼りは意味のない時代になってきた。国民が求めているのは、国益のために力を合わせ、国民のために結果を出すことだ」
5月16日に開かれた清和会のパーティーで、岸田文雄首相はこう挨拶した。岸田政権として衆院選と参院選を戦い抜き、4月に行われた五つの衆参補選では、衆院和歌山1区を除いて4勝した。昨年5月17日の清和会のパーティーでは党役員の名前を挙げた際に、高木毅国対委員長の名前をすっ飛ばすなどぎこちない様子を見せた岸田首相だが、今回は余裕さえ感じさせている。
そういえば2021年12月に開かれた清和会のパーティーの時とも雰囲気が違う。故・安倍晋三元首相が清和会の会長就任のお披露目を兼ねたこの時のパーティーで、岸田首相は財政規律を重視する故・福田赳夫元首相が池田勇人内閣を批判するために1962年に「党風刷新連盟」を結成し、それが清和会の源流になったことを披露した。すなわち「対立」を暗示したのだ。
その安倍元首相は昨年7月、参院選の最中に銃弾に倒れた。この時、自民党は8議席増やし、単独で改選過半数となった。また32ある1人区のうち、28選挙区を制している。
岸田首相はこれで自信を深めたのだろう。ウイングを右に広げていく。臨時国会閉会後の12月に、2023年度から5年間の防衛費の総額を43兆円にすることを閣議決定した。その姿は社会保障政策でウイングを左に広げた安倍内閣を彷彿とさせる。岸田首相が目指すのは伝統的な宏池会のリーダー像というより、安倍政権のような強さのある長期政権だ。