天皇、皇后両陛下は、6月17日から7日間、インドネシアを公式訪問した。即位後初めて、お二人そろっては約21年ぶりとなる国際親善訪問だった。AERA 2023年7月10日号から。
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「球技が好きなんですか? うちの娘の愛子も球技が大好きで」
皇后雅子さまの声が聞こえてきた。6月17日、インドネシアに到着、ジャカルタ市内の宿泊先のロビーに待っていた、日本人学校の子どもたちとのやりとりだった。
お隣の天皇陛下も雅子さまも、子どもの目の高さに合わせている。「部活とかもあるのですか?」と雅子さま。小学生らしい男子が「和太鼓部に入っています」と答えていた。
雅子さまの声が明るく、軽やかで少し驚く。8日前に公表された「ご結婚満30年に際しての両陛下のご感想」との落差があったからだ。1200字余りと短く、硬い印象だった。過去4回「結婚の節目」に公表された文書、または記者会見の文字数と比べて最も短かった。令和になり立場が変わったことは承知の上だが、それにしてもエピソードが少なく、素顔が見えない。そんなふうに感じた。
出発前の記者会見も陛下お一人。お二人での訪問を喜びながらも、雅子さまの体調にはまだ波がある、暑さの中、無事に務めてくれれば、という説明だった。それが一転、インドネシアでの雅子さまは明るく、欠席予定の日程に出席するほど体調もよさそうだった。何より素顔が感じられた。決め手は声。あちこちで聞こえたのだ。
驚いたり笑ったり
例えば19日。ジョコ大統領の妻・イリアナさんの案内で、さまざまな伝統文化を体験した。バティックのろうけつ染めに挑戦するシーンで、「手が震える」という声が聞こえてきた。ろうを少しこぼすと、「垂れちゃいました」。すぐに「しみが……」と言っていて、“失敗”の告白だった。
20日は日本語を学ぶ大学生や職業専門高校の生徒と交流した。陛下単独の予定が、直前に雅子さまも加わることが決まったという。「卒業論文ということは4年生?」「プログラミングはどれくらいされているんですか?」。雅子さまはたくさん質問し、驚いたり笑ったりしていた。
いきいきとした雅子さまの様子を伝え、「同行している宮内庁職員も『あんなご様子は初めて見ました』と、驚きと喜びを口にしました」と報じていたのは、TBSだった。バティックを身につけ、声を立てて笑う雅子さまのアップが映った。「ありがとうございます、テレマカシー」と述べていた。
それにしても、と思う。雅子さまの明るい声が聞けるのは、なぜ海外だけなのだろう。