「もう一つの要因として注目されているTCHは日中、歯を接触させる癖のことです。自分では気づかないうちにしている人がけっこういます」(同)
人が一日の中で食事の時間を含め、歯が接触しているのは15分程度。しかし、TCHの癖がある人は、この時間が長い。
「これにより脳の興奮が高まる。咀嚼筋の疲労も影響して、かみ合わせの違和感が生じることがあるのです」(同)
みどり小児歯科院長で昭和大学客員教授の和気裕之歯科医師はいう。
「TCHはごく軽い接触ですが、持続時間が長い。そのため、歯ぎしりやくいしばりより、顎や歯に害が大きいと考えられています」
なお、唇と目を軽く閉じ、リラックスしたときに上下の歯が接触していて、そのことに違和感が生じない、あるいは歯を離したくならない場合はTCHの可能性が高いという。
「このような患者さんにはTCHをやめる方法である、TCH是正療法をおこないます。これは心理療法の一つである習慣逆転法を応用した治療です」(和気歯科医師)
習慣逆転法とは好ましくない習癖を意識することで、別の行動に置き換えて、癖をやめる治療だ。抜毛症や指しゃぶりなど、さまざまな習癖に用いられている。
「患者さんには生活の場に『歯をあてない』などと書いた付箋を10枚以上貼ってもらいます。それを見たときに歯がついていたら、大きく息を吸って一気に口から吐き、全身を脱力させます」(同)
TCH是正療法は、この療法をおこなっている歯科医院の指導を受けてから取り組むのがいいという。
■心身のリラックスが症状を緩和する
二つ目の精神的な不調によるものは、重症のケースだ。和気歯科医師はこう話す。
「うつ病の評価に使われる心理テストを受けてもらうと、うつ傾向と出ます。患者さんに話を聞くと家族の問題や自身のからだの不安など、悩みを抱えている人が多いです」
こうした重症例の約70%は、歯科治療をきっかけに症状が生じることがわかっている。