「うつ状態のときに詰めものやかぶせものなどの処置をすると、口の中の変化に脳が順応できず、違和感が生じやすいと考えられています」(同)
こうした患者には、歯科医師が話をよく聞くことが大事だという。
「患者さんの中には固形物を食べられず、流動食や点滴を続けている人もいます。その苦しみを理解し、TCH是正療法や痛みを緩和する薬など、できることを取り入れていきます。根気よく続けるうち、少しずつよくなっていきます」(松香歯科医師)
和気歯科医師は腹式呼吸やリラクセーションなど、心身をリラックスさせる方法を患者に指導している。
「睡眠や運動も大事であることをお話ししています。また、あえて上下の歯を合わせてかみ合わせの状態を確認することや、舌で気になる部分を触ることもできるだけやめていただきます。歯のことを忘れる時間を増やすことができれば、症状は徐々によくなっていきます」
なお、数は少ないものの、うつ病や統合失調症など、精神疾患があり、その症状の一つとしてかみ合わせの違和感が生じていることもある。
「最近は歯科と精神科などが連携して診療する、リエゾン外来のある医療機関が出てきています。精神科や心療内科に行くことに抵抗がある場合は、こうした外来を受診するといいでしょう」(和気歯科医師)
(文・狩生聖子)
※週刊朝日2023年5月26日号より