AERA 2023年7月3日号より
AERA 2023年7月3日号より

 実態把握ができなくなっているのは日本だけではない。国際的に全数把握をやめたり、検査数を減らしたりしている国が増えている。世界保健機関(WHO)が5月5日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の終了を宣言したこともあり、その傾向が強まっている。6月15日に公表されたWHOの疫学週報によると、加盟国・地域のうち、過去28日間の感染者数をWHOに報告したのは59%にとどまっているという。

 新型コロナウイルス感染症の今後の推移について、本田教授は次のように説明する。

「常に感染者はいるものの、公衆衛生上の大きな脅威にはならない、『エンデミック』と呼ばれる常在化した状態に移行しつつあると考えられます。過去3年間は、数カ月ごとに新規感染者数が増減する波を繰り返してきました。今後しばらく、そのパターンが続く可能性があります」

■流行が繰り返す可能性

 流行の規模がどれぐらいになるのかは、感染したり、ワクチンを打ったりして獲得した免疫のある人の割合がどれぐらいか、どのような系統のウイルスが流行するのか、人々がどのような行動をとるのかによって左右される。流行している系統に対する免疫をもつ人が増えれば、流行規模は小さくなる。

 厚労省が5月17~31日に献血した約1万8千人について調べたところ、新型コロナウイルスに感染してできた抗体をもっている人は全体の42.8%だった。2月に実施した同様の調査では抗体保有率は42.0%だったので、2月以降、ほとんど増えていなかった。

 欧米や中国、韓国などでは、国民の8割程度が一度は感染したと推測されている。それでも流行が繰り返されている状況をみても、国内でもしばらくは、流行が繰り返す可能性が高い。

 6月16日に開催された厚労省の専門家会議は、今後の状況について、「新規患者数の増加傾向が継続し、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性がある」とした。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2023年7月3日号より抜粋