AERA 2023年6月26日号より
AERA 2023年6月26日号より

 女性は「良くないことだとわかっている」から、シッターサービスを頼んだこともあるが長女は大泣き。隣の部屋でテレビを見せても、1人でじっと座っていることはない。いずれも仕事にならず、結局、隣で音量を下げてiPadを見るスタイルに落ち着いたのだという。女性は、

「それしか方法がなかったんです」

 とこぼす。長女は今、眼科で処方されたメガネをかけ、7歳の誕生日に祖父母から届いた子ども用パソコンに夢中だ。学校では、タブレットを使った授業が始まり、プログラミング教育も必修化されている。

 加速するデジタル環境。内閣府の22年度の「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、ネット利用率は1歳で28.6%、3歳で61.3%、5歳で77.3%、9歳で9割に達する。赤ちゃんの頃から知育アプリに触れるなど目にとっては過酷な状況があるのだ。

 子どもの視力低下や近視の進行予防についての研究を行っている東京医科歯科大学の眼科医、五十嵐多恵医師は、

「生活スタイルの変化によって、就学前に近視の診断を受ける子どもも増えています」

 と指摘する。前出の学校保健統計調査では、5歳児で視力1.0未満が24.81%に上っている。

「幼い年齢で近視になればなるほど進行が早く、強い近視になってしまう。特に10歳以下で発症すると、強度近視になりやすい。メガネやコンタクトの度数がマイナス6.00Dを超えた場合、4人に1人が75歳以上でなんらかの視覚障害に陥る。平均寿命が延びているので、将来的に視覚障害で困る人も増えるということです」(五十嵐医師)

AERA 2023年6月26日号より
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■東アジアで顕著

 世界の眼科医らが注目しているのは、特に東アジアで近視人口の増加が目立つことだ。20歳以下の近視保有率が80%を超える国が続出している。多くの研究によって、欧米に比べて、屋外で過ごす機会が少ないことと、室内で目とノートやデバイスが近い状態での詰め込み式の学習スタイルが主流であることが原因だと指摘されている。

 つまり、近視は遺伝だけでなく環境要因によっても起きるのだ。五十嵐医師も、

「最近の低年齢での近視の発症は、生活スタイルによるところが大きい。生活スタイルの改善で発症や進行を抑制できる」

 と断言する。まず大切なのは「外遊び」だという。屋外活動には、手元を見る作業の弊害を打ち消す効果があるとされ「1日2時間以上の屋外活動が有効ですが、2時間に満たなくとも効果はある」(五十嵐医師)。

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