視力の低下につながる可能性がある「寝ながらスマホ」
視力の低下につながる可能性がある「寝ながらスマホ」
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 2050年、世界人口の約半数が近視になるという研究結果が注目されている。日本では特に子どもの視力低下が目立つ。さまざまなリスクから目を守るには。AERA 2023年6月26日号の記事を紹介する。

【近視を防ぐ3大ポイントはこちら】

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 2050年、世界人口の49.8%が近視になり、失明につながる「強度近視」人口は9億3800万人(10人に1人)に達する──。オーストラリアのブライアン・ホールデン視覚研究所のこんな研究結果が話題を呼んでいる。この結果が米国眼科学会誌「Ophthalmology」に報告されたのは16年。その数字は、コロナ禍を経てより拡大しているとみられている。2050年といえば、27年後。そう遠くない未来の話だ。

■重大疾患で社会問題

「近視になってもメガネやコンタクトをすれば問題ない、と考えている方が多くいますが、違います。強度近視になれば、失明する可能性がある。近視は重大な疾患で社会問題です」

 と警鐘を鳴らすのは、近視治療薬の研究で知られる窪田製薬ホールディングス(HD)の窪田良会長だ。「強度近視」と診断され始めるのは、コンタクトレンズの度数がマイナス6.00D以上くらいから。裸眼視力では0.1以下。視力検査表で一番上の「C」が見えづらくなったら要注意ということだ。眼科医でもある窪田会長は、

「強度近視になると緑内障、白内障、網膜剥離(はくり)、近視性黄斑変性症になるリスクが数倍にはねあがる。いずれも失明の原因になるものです」

 と説明する。Haarman AEGの20年の報告書によると、強度近視になった場合の発症リスクは緑内障が3倍になり、網膜剥離は13倍、近視性黄斑変性症にいたっては845倍にもなる。

 いま特に増えているのは、子どもの近視だ。

 文部科学省の学校保健統計調査によると、21年度に裸眼視力1.0未満だった小学生の割合は、1年生で約4人に1人、3年生で約3人に1人、6年生では約半数にのぼった。小学生全体における1.0未満の子どもの割合は36.87%。40年前の1981年(19.05%)と比べると、実に2倍近い。

■生活スタイルの影響

 都内の外資系金融機関で働く女性(40)は、小学校2年生の長女(7)が昨春の入学後に校内で受けた視力検査で両眼とも0.7で近視と診断された。女性は、

「ショックでした。でも、絶対にいつかこうなるとも思っていた」

 と話す。仕事柄、海外との打ち合わせが多く、時差の関係で午後8時といった“子育てコアタイム”にパソコンに向かうことが多い。そんな日は、先に夕飯とお風呂を済ませた長女を隣に座らせてiPadでYouTubeを見せている。時間にして30分から1時間ほどだが、育休から復帰した2歳の時から5年以上続いてきた習慣だ。

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