
木村拓哉さんがAERAに登場。長く経験を積むほど、代わり映えのしない景色が増え、人間関係は複雑化していく。だからこそ「体の声に耳を澄ますことが必要だ」と話した。AERA 2023年6月26日号から。
【写真】蜷川実花が撮った!AERAの表紙を飾った木村拓哉さんはこちら
* * *
常に自然体だ。インタビューするのは5回目になるが、蜷川実花との対談で談笑する姿は、いつも以上にリラックスしているように見えた。
思えば、彼ほど世間から偶像を求められる人間はいないかもしれない。蜷川も言及した通り、デビュー以降、“キムタク”という高いハードルを常に求められ続けてきた。
それに対して、本人は「いい」とも「悪い」とも言わない。求められたことは「全力でやるだけ。プレッシャーがあるほうが好きだ」と話す。
また、自身は“自分らしさ”のようなものを考えたり、そこにこだわったりしたことはないと言う。
「僕は、自分が経験して感じたことじゃないと話せない。自分がかっこいいと思うことをやる、ダサいと思うことはしない。“らしさ”っていうのは、その結果でしかないと思う」

木村の言葉どおり、話を聞いていると、たまにパドリングやヨットなど、海で経験したことのたとえ話が出てくる。サーフィンは「究極のリフレッシュ」であるとともに、ひとりの人間に立ち返る場所でもあると話す。
「時期やタイミングで、変わった人や物ごとはあった。でも、そこに行けば、一切、“柄”の変わらない友人がいる。嘘みたいな太陽の光を浴びて、海の上にただ浮かんでいる。それだけで満たされるんですよ」
世相も人間関係も刻刻と変化していくが、迷ったときほど自分の体の反応や直感に素直になる。そのシンプルさが、長い間走り続けてこられた強さにつながっているのかもしれない。(ライター・澤田憲)
※AERA 2023年6月26日号