撮影/写真映像部・東川哲也
撮影/写真映像部・東川哲也
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 学校の教員不足を解消するために、教員の負担を軽減する働き方改革は必須だ。そこで、学校内だけではなく、外部の人材に頼ることが解決策の一つとして注目されている。志を持って教職についた教員が、働き続けるためにはどんな改革が必要なのか。AERA 2023年6月19日号の記事を紹介する。

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「先生も助けを求めていい。授業も保護者対応も、課外活動もすべて学校内でやろうとするのは無理がある。学校や地域のニーズに合わせて、外部の専門家とつながってほしい」

 と話すのは、教育現場に専門性の高い人材を派遣するマッチングサービス「複業先生」を運営するLX DESIGN(東京都)の金谷智社長(33)だ。東京学芸大学で学び、教員免許を取得。都内の公立小学校で4年間働いた経験がある。当時を振り返り、こう語る。

「ずっとモヤモヤしていました。先生たちは、みんな真面目で情熱を持って教員になっている。でも業務に忙殺されるうちに志を見失ってしまう。先生の業務負荷を下げる価値観とワークシェアの仕組みが必要だと思い、起業しました」

AERA 2023年6月19日号より
AERA 2023年6月19日号より

 現在、登録している「先生」は国内外の1243人。プログラミング、IT、金融教育や性教育などの様々な分野のスペシャリストがそろい、求められる学校現場に派遣しているという。

 6月5日、同社は本市教育委員会との連携協定を締結。同市に隣接する菊陽町では現在、世界的な半導体メーカー台湾積体電路製造(TSMC)の工場が建設中で、今後は従業員やその家族が海外から多くやってくるという。英語や中国語ではない言語を母語とする子どもたちが増えるとみられ、LX DESIGNは通訳をオンラインで派遣する予定だ。同市の遠藤洋路教育長はこう話す。

「まずは通訳からですが、各学校と地域のニーズに応じて先生をマッチングするノウハウを吸収し、先生たちの負担軽減につなげていきたい」

 金谷社長は言う。

「人手不足だからこそ、先生ひとりひとりの生活を豊かなものにして、よりよい授業をつくる体制が必要です」

 その先に、教員という仕事の魅力が増し、志願者も増えるのだろう。(編集部・古田真梨子)

AERA 2023年6月19日号より
AERA 2023年6月19日号より

AERA 2023年6月19日号より抜粋

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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