大都市圏に住む人の中で、田舎や地方都市への移住を希望する人が増えています。昨年公開された内閣官房「まち・ひと・しごと創生本部」による「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」によると、東京在住者の 4 割が地方への移住を検討、または今後検討したいと考えているとのこと。特に 30 代以下の若年層及び 50 代男性の移住に対する意識が高いそうです。
いざ移住する際に立ちはだかるのは住環境や仕事など「現実的な問題」。最近では、移住希望の不安を払拭しようと、各種移住促進イベントが全国各地で行われています。
そんな中、2月22日に東京・下北沢の本屋B&Bで移住希望者向けのトークイベント「そろそろどこが一番働きやすいか決めようか会議」が開催されました。同イベントではIT・デジタル関連企業やクリエイターが多く集まる渋谷・鎌倉・福岡の3都市に本社を構える企業の経営者たちが登壇し、移住希望者が知りたい移住先の仕事の話をメインテーマに、それぞれの都市の"働きやすさ"について語り合われました。
登壇者はCINRA代表取締役の杉浦太一さん(渋谷代表)、面白法人カヤック代表取締役CEO柳澤大輔さん(鎌倉代表)、さらにヌーラボ代表取締役の橋本正徳さん(福岡代表)のお三方。その中で、ヌーラボの橋本さんは福岡の魅力について「自然が近い」「建物が低く、圧迫感がない」「東京など大都市圏に比べ、街がごちゃごちゃしていない」、「空港が近く、便利なので海外含めた他地域での仕事もしやすい」と指摘。とにかく福岡は住みやすい街だといいます。つまり、「住みやすい街」は「働きやすい街」でもあり、またその逆も真なり、ということ。
本書『年収は住むところで決まる』は、"いい仕事"のある都市や平均年収の高い人たちが暮らす都市に焦点を当てた一冊。シアトルやシリコンバレー、中国・深センなどといった世界的大都市を例に挙げて、それらの都市がどのようにして発展していったか、またそこで起きた格差問題や少子化問題、教育問題などについても取り上げています。
著者は、経済学者のエンリコ・モレッティ氏。本書の中で、魅力的な都市の条件について「厚みのある労働市場があること」、「エコシステムが充実していること」を挙げます。その条件を満たすと、人が多く集まり、交際相手を探す上でも理想的な相手を探しやすい、とモレッティ氏は言います。ちなみに、理想的な交際相手を見つけやすいと、雇用主である企業にとっても大きな利点になるのだそうです。理想的な相手を見つけた場合、その土地で結婚までたどり着き、その後もお互い退職せずに同じ職を全うするケースが多い、というのがその理由。特に近年では共働きの夫婦は多く、そういったケースが増えているのだとか。
住む場所により人生は大きく変わってしまいます。移住を希望する人もそうでない人も、自分にとって魅力的な都市とはどこなのか、一度、考えてみてはいかがでしょうか。