「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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5月14日は「母の日」でしたね。読者の皆さんはお母様に何かプレゼントなどされましたでしょうか。
私は小学校3、4年生の頃に、カーネーションを一輪、母にプレゼントしたことをよく覚えています。
というのも、自分でお金を出して誰かにプレゼントをあげたのは、そのときが初めてだったからです。
お小遣いをためて、近くのお花屋さんに行きました。
カーネーションがいくらだったのかは思い出せないのですが、「いくついる」と店員さんに聞かれて「ひとつ」と答えたことは鮮明に覚えています。
母はとても喜んでくれました。その様子を見て、私もとても嬉しかった。
プレゼントをもらう方は、それがサプライズだったりすると嬉しい半面、「もらうまでの楽しみ」はもちろんない。でもあげる方は、あげる人の喜ぶ顔を思い浮かべながら品物を選んだり、もうそのときから楽しい。
つまり、より長くわくわくと、楽しく過ごせる面もありますよね。
誰かにプレゼントできるのはすごく嬉しいこと。もしかしたら「ありがとう」と言われる側の方が、言う方以上に嬉しいのかもしれない──そう強く感じる原体験になった気がしています。
逆にいただいたもので思い出に残っているのは、三菱商事からローソンに移るときにいただいた名刺入れです。
その直前まで、三菱商事で小林健社長(当時)の秘書をしていたのですが、お供をした際にお知り合いになった小林社長の縁の方たちが壮行会を開いてくださり、その時にいただきました。いまでも大事に使っています。
名刺入れを使うたびに、常にワクワクドキドキしながら、謙虚に感謝することを忘れず仕事をしていかなくてはという初心を思い出しています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2023年5月22日号