西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修さんは、野球の未来を語る。
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特別な思いを抱えながら今、つづっている。1922年から101年。プロ野球が誕生するずっと前から手元にあった雑誌が休刊を迎える。その歴史の深さとともに、野球に携わる者が、貴重なその1ページを担わせてもらっている。改めて野球が国民のみなさまの生活の一部としてもらえている証拠だと思うし、私にとっても日常であったこのコラムも終了すると思うと、感謝とともに複雑な思いがわいている。
本当に勝手気ままに書かせていただいた。「この内容はやめて」「こういった内容にして」と言われたことは一度もない。自由な空間の中で、とりとめもないことを書いてきた。ただ一点、「野球って○○だな」と一人でも多くの方の思考の中に届けば、と思っていた。
大谷翔平や村上宗隆、佐々木朗希のように、かつての物差しでは測れないスケールの大きな選手が出現している。10年前に主流だったものも、考え方を常にアップデートしないとついていけない時代だ。だからこそ、指導する立場の方々に言いたい。「自分の野球、自分の正論の押しつけはやめましょう」ということだ。特に若年層を指導する方々に言いたい。
少年少女を教えるとき、絶対にやっちゃいけないことだけは教えてあげなきゃいけないが、指導者が知っている知識、技術を押しつけてほしくはない。「心技体」の「心」は、まずは「楽しむ」ということ。さらに体力がついてくれば、技術も向上する。知識の詰め込み、細かすぎる指導というものは、選手の可能性をつぶしかねない。
投手であれば、プロ野球で主流のセットポジション、もしくはノーワインドアップからの投球を教えがちだ。ただ、ワインドアップから大きく体を使うことを知らない投手が、いきなり最初からセットポジションでは、スケールを小さくするようなものだ。少年少女がプロ野球に入るときには、きっと野球界の考え方はさらに先にいっている。