週刊朝日、連載の依頼を受けたときのことを思い出し、最後のコラムで私の書きたいことは決まった。
女性らしい視点から、なにかを訴えるならこれだ。子どものPTAで知り合った母親同士は、子どもがたまたまおなじ学校に通っているというだけで、医師も専業主婦もフリーアルバイターも公務員も、たまにいる父親とだって、みな同列でヒエラルキーなぞなく、子のための話ができた。
違いを探して眉をひそめるのではなく、違った人間同士が手を握り合うことの、利点を探した方が有益だ。
どうか、自分ではない誰かを愛すことを躊躇(ためら)わないでください。なにがあっても私たちはそのことを躊躇わなかった。だから、今があるのだ。この先もきっとそうだ。
長い間、ありがとうございました。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
※週刊朝日 2023年6月9日号