林:はい、はい。

大石:あれは国宝かつ「世界の記憶」(旧記憶遺産)で、一般には公開されてないんですけど、それを見せてもらいに行ったら、道長に「書け」って言われているような感じがして、ゾクッとしました。

林:まあ、素晴らしいです。でも、平安時代の彼女たちってほとんど外に出てないで、ずっと家の中にいる。あの時代は合戦もないし、そういう中での大河ドラマって大変だと思う。そこは大石静流でどうにかしちゃうんですか。

大石:大河って戦国とか明治維新とか、必ずグッと変わるきっかけがあるけど、道長政権のときは太平の世だから目立った戦もないし、人の心の中の激動を描くしかないので、それをどう退屈させずに見せるかっていうのは難しいです。いままでの大河とはだいぶ趣が違うと思いますので、不安ではありますね。でも「ゴッドファーザー」と「華麗なる一族」を足したような、ゾクゾクする物語にするよう奮闘中です。

林:楽しみです。私、京都の風俗博物館で十二単を着せてもらったことがあって、「脱がされるときはどうするんですか?」って聞いたんです。そしたら亡くなった渡辺淳一先生も同じことを聞いたみたいで、「作家ってどうして着ることより脱がせることばっかり考えるんですかね」って(笑)。

大石:私もどうやって一瞬で脱ぐんだろうと思ってたんだけど、十二単ってわりと下の身分の女房たちの正装で、たとえば私たちがホテルでルームサービスを頼んだとき、運んでくる人はネクタイしてきちっとしてるけど、私たちはパジャマで受け取ったりするでしょう。そういう感じで、貴族ほどラクな格好をしていたらしいです。わりとペロッと脱げるらしいんですよ。十二単といっても、さすがに12枚はなくて7、8枚で、しかも全部脱ぐという感覚は、当時はなかったと思います。

林:『源氏物語』でも、廊下の隅でそういうことをしようとするじゃないですか。びっくりしますよ。

大石:現代ではびっくりだけど、あの時代は「はじめまして」という感じで女を抱くんじゃないですか。

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