ウクライナももともとは、2014年のマイダン革命の結果始まった内戦にロシアが介入したことが後の侵略戦争にまでつながる。ウクライナは現在、ロシアの領土への攻撃を自制し、朝鮮戦争と同様の「限定戦争」に留まっている。台湾有事の場合は、日米安全保障条約と集団的自衛権の限定的容認があるから、アメリカと中国の戦火が開かれれば、日本も参戦せざるを得なくなるのだろうか? 安倍元総理はくだんの回顧録で、「日本の存立が脅かされる明白な危険があれば、存立危機事態として集団的自衛権の行使が可能」と言っているが、仮に横須賀へ中国のミサイルが着弾すれば、そうなる可能性は充分ある。
日本共産党員で党首公選制を主張したかもがわ出版の編集主幹が除名されたが、実は問題は党首公選制にあったのではなく、日本共産党の安全保障政策に対してこの編集主幹が異をとなえたことにあっただろうことは、彼の本『シン・日本共産党宣言』(松竹伸幸著)を読むとよくわかる。共産党にとって仮に政権に参加したとして、日米安全保障条約にのっとって台湾有事に対応するのか否かというのは悩ましい問題だ。
しかし、今やそれを現実のものとして議論をしなければならないことになっている。
「米中もし戦わば」、どんなことが予想され、日本にどんな選択肢があり、どのようなシナリオが予想されるのか。
そのことを鳥瞰的な視点で、俯瞰し、整理できるのは、メディアだけだ。そして、それが戦争を防ぐことにもなる。
下山 進(しもやま・すすむ)/ ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文春文庫)など。
※週刊朝日 2023年6月2日号