英エコノミストは、有料デジタル版で成功。部数を伸ばし続ける唯一の週刊誌。最新の契約者数はグローバルに118万5千人。2023年3月11日号の表紙
英エコノミストは、有料デジタル版で成功。部数を伸ばし続ける唯一の週刊誌。最新の契約者数はグローバルに118万5千人。2023年3月11日号の表紙

 このことこそ、今日本のメディアがカバーしなければならない喫緊の課題だ。

 英エコノミストのエグゼクティブエディターで、『The World in』の編集長を2020年まで務めたダニエル・フランクリンはかつて私にこんなことを言っている。

「歴史がそのまま繰り返すことはない。が、歴史をみることで、新しいものごとが起きた時にどのような反応が起きるか、ある程度予測できる」

 その意味で、最近、私がまだ文藝春秋の編集者だったころ編集した一冊の本をよく見返している。デイヴィッド・ハルバースタムの『ザ・コールデスト・ウインター朝鮮戦争』である。

 日本人にとって、この本の白眉は、仮にマッカーサーをトルーマンが解任しなければ、日本が戦場になったことがはっきりとわかることだ。

 マッカーサーは原爆の使用の他に、台湾の蒋介石軍を参戦させて中国を挟み撃ちにすることを主張していた。しかし、これは朝鮮半島という限定戦争を、日本を巻き込んだ全面戦争に拡大することになっただろうとハルバースタムは示唆している。マッカーサーは、アメリカにとっての聖域を見ていない。仮に中国本土に米軍が攻め入れば、ソ連も参戦せざるを得ず、「東京と横浜の工業および港湾施設」は「(ソ連・中国にとって)きわめて魅力的な(攻撃)目標だった」。

 そうした知識をもって、話題の『安倍晋三回顧録』を読むと、たとえば安倍晋三がトランプに最初に会ったとき、「中国は太平洋に展開している米国の第七艦隊を狙っている」とまず説いて、こんなことを言ったというくだりに肝を冷やすことになる。

<米国外で唯一、米海軍の空母を整備できる場所は、横須賀基地だけだ>

 これは逆に言えば、今やミサイルを持つ中国にとって「魅力的な目標」ということになる。

 つまり1946年に始まった国共内戦で国民党軍が逃げ込んだ台湾をめぐる内戦が、ウクライナのように国家間の戦争になり、そして周辺の国も巻き込む全面戦争になるかという問いだ。

次のページ