前代未聞の米大統領経験者起訴に対し、ドナルド・トランプ氏が反撃に出ている。自らを「被害者」とするイメージ戦略で、世論調査では支持率が上昇中だ。世界一の大国は今なお「トランプ劇場」に翻弄されている。AERA 2023年5月15日号の記事を紹介する。
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ドナルド・トランプ氏の起訴後、彼の選挙陣営は「焼け太り」状態だ。まず、3月下旬に起訴近しとメディアが報道した際、「来週火曜日(3月21日)に逮捕される」とSNSに投稿し、3日間でおよそ150万ドル(約2億円)を集めた。
起訴発表後の24時間では、400万ドル(約5億4千万円)もの寄付金が転がりこんだ。
トランプ氏と彼の陣営は支持者に対し、起訴が違法かを問うのではなく、「司法制度が不正」で、トランプ氏は「不当な扱いを受ける被害者」というイメージを植え付けることに成功している。
支持率も上昇中だ。
WSJは24年米大統領選の共和党候補指名争いで、誰に投票するか調査を行った。現在対抗馬とされているフロリダ州知事のロン・デサンティス氏とトランプ氏のどちらに投票するかを尋ねたところ、昨年12月時点ではデサンティス氏がトランプ氏を14ポイント上回っていたが、今回(4月)の調査ではデサンティス氏38%、トランプ氏51%となり、トランプ氏が13ポイントもリードしている。
■好感度ではデサンティス氏、バイデン大統領も出馬表明
ただ、好感が持てるかという質問では、デサンティス氏が84%、トランプ氏は78%だった。また、大統領選本選挙で、4月25日に公式に出馬表明したジョー・バイデン大統領に勝てる可能性が高い候補を聞いたところ、共和党予備選有権者の41%がデサンティス氏、31%がトランプ氏と回答している。
では、デサンティス氏とバイデン氏の勝敗はというと、デサンティス氏が48%で、バイデン氏の45%を上回った。トランプ氏対バイデン氏では、バイデン氏がトランプ氏を3ポイント負かしている。
ただ、リードはいずれも誤差の範囲内。20年大統領選ではバイデン氏が4.5ポイント差と、余裕を持ってトランプ氏を破った。
世論調査の結果が示すように、勝敗はまだら模様だ。しかし、特にトランプ氏とデサンティス氏との対立は、滑稽とも思えるほど過熱している。
トランプ陣営は、新たなオンライン広告をツイッターで公表した。
「18年フロリダ州知事予備選があった際、デサンティスの支持率は対立候補よりも17ポイントも低かった。トランプが公認したことで、支持率は跳ね上がった。アメリカを再び偉大な国にできるのは、たった一人しかいない(トランプだ)」