心臓は、心筋という筋肉がリズムよく収縮することによって、血液を全身に送り出すポンプ機能を持っている。この力が低下すれば、血液が全身のすみずみまで巡らなくなるため、多くの臓器や組織が栄養不足、酸素不足に陥り、さまざまな健康問題が起きてくる。
では、心不全はどのように進行するのか順を追ってみていきたい。まずは高血圧や弁膜症、心筋梗塞など何らかの循環器疾患を患うと、それらがきっかけで心臓の機能が低下する。このときに起こってくるのが、「坂道や階段を上るときに息が切れる」「日常的に疲れやすくなる」といった症状だ。
そして、すでに弱った心臓に過労や過食、不眠などが加わると全身状態が一気に悪くなり、呼吸困難や失神、チアノーゼ(皮膚などが青紫になる現象)、浮腫(ふしゅ)などが起きる。風邪やインフルエンザなどの感染症、誤嚥(ごえん)性肺炎といった病気、水分の過剰摂取などでも同様のことが起きる。
このときに適切な治療をすればいったんは回復するが、比較的安定している時期と、状態が悪くなる「急性増悪」を繰り返しながら悪化していく。木原医師が指摘する。
「心臓の機能は十何年という年月をかけてゆっくりと低下していきます。するとその状態に慣れてしまい、『疲れやすい、元気がないのは年のせい』とか、『むくんでいるのは体質』と思ってしまう。まさか、それらの症状が自分の心臓の状態と関係しているとは思わないのです。まずは、かかりつけ医に相談してください。その上で検査を受けてもいいと思います」
■治療は薬物療法、食事療法の二つ
心不全の治療は、薬物療法と食事療法の2本柱で進められる。心不全をもたらす要因の一つが高血圧であるため、薬は降圧薬を中心に使っていく。食事療法では栄養バランスのよい食事と水分、塩分の管理が必要となる。このほか、心筋梗塞や弁膜症などの基礎疾患が原因で心不全になっているような場合は、手術や内科的な処置が検討されることもある。