漫画家・西原(サイバラ)理恵子さんと「コータリン」ことコラムニスト・神足(コウタリ)裕司さんの“サイコウ”コンビのボロクソ採点が評判だったグルメガイド連載「恨ミシュラン」。1992年から2年間にわたり連載されたが、店によってはその影響は今も残っている……。
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■失われた30年で多くが姿消した
連載終了から30年近くが経過し、掲載した人気店やスポットの多くが閉店・閉業した。特にディスコやイベント会場の類はバブル崩壊後の「失われた30年」の間にほぼ全滅。東日本大震災やコロナ禍を経て、さらに多くの店が姿を消した。
東京の飲食店に限ると、2人が訪れた店は62店あり、このうち今も同じ場所に現存するのはちょうど半数の31店。残り31店の多くが閉店し、支店を何店も出していたような繁盛店も規模を縮小したり、支店に統合されたりして移転していた。
2人はこれらの飲食店にどんな評価をしていたのか、検証してみた。
まず、2人の恨ミ度が合計で8点(10点満点)以上だった「最悪店」は62店中15店。うち11店が閉店し、4店(老舗料理店が多い)が今も営業している。
移転・閉店した31店の平均恨ミ度は6.0点と高めだった一方、営業を続ける31店は4.7点。これが統計的に有意かどうかまではわからないが、2人の評価はあながち間違っていなかったのでは、とうかがわせる数字ではある。
連載時に新宿の野村ビルに本店があった「星岡茶寮」は、かの北大路魯山人ゆかりの割烹料理の名店。当時は支店だった阿佐ケ谷店に本店を移し、いまも「星岡」として営業中だ。そんな名店にも2人はそろって恨ミ度5をつけた。西原さんは「枝豆がいたんでた」「魚が生焼け」「毛ガニがすかすか」と文句を並べ、神足さんも「温泉旅館の豪華料理にも劣る」と切り捨てている。
2人の悪評が原因で移転したのかと恐る恐る取材すると、責任者は開口一番、「そんなことはないです」。こちらの不安を否定してこう続けた。