男子生徒がアップした動画は、不快ではあった。視聴した多くの人を傷つけもした。だが、法律を犯したわけではない。はたしてこれほどまでの「制裁」を受ける必要はあったのだろうか。

 公立高校で教員として働く20代の女性は疑問を投げかける。

「SNSに安易に載せる側にも問題はあり、内容的に批判されても仕方がないことかもしれません。ただ、生徒個人の情報をネットに晒したり、脅したりする行為は、これからいろんなことを学んで大人になっていく高校生に対して社会があまりに攻撃的すぎて、教育的ではない」

 ネット上でも、犯罪性のない未成年者の行動を糾弾するのはおかしいとの指摘が相次いだ。それを受け、ガレソ氏も「未成年者に関するニュースは特に慎重に取り扱います」と運用方針の見直しを表明。アカウントの運用ポリシーについて取材を申し込んだが、返答はなかった。また、ガレソ氏の方針変更に対しても「つまらなくなる」「晒された子は良い経験になったと思って頑張ってほしい」などのリプライがつくなど、“私刑”は収まりそうにない。

■やっていることは同じ

 一連の晒し行為に問題はないのか。ネットの中傷問題に詳しく、ガレソ氏による告発の相談を受けたこともある清水陽平弁護士はこう指摘する。

「そもそもネット上に投稿されたものなので、それに意見すること自体は違法ではありません。ガレソさんはどこまで情報を書くのかを相当に配慮して投稿しているようで、権利侵害にあたるかと言われれば難しいものが多い。ただ、投稿を見た人が誹謗中傷をしたり、氏名や住所などを晒したりした場合はプライバシーや平穏生活権の侵害にあたる可能性があります」

 前出の山口さんも言う。

「動画を投稿した本人が気軽にやったように、告発を見て誹謗中傷している人も深く考えずにやっている。同じ穴のムジナで、やっていることは同じです」

 男子生徒の通う高校には、今も「お叱り」の電話が続いている。そんななか、福島第一原発事故による避難指示を受けた福島県双葉町に住むという人から、こんな電話もあったという。

「子どもを責めないで。当時4、5歳だったのなら、わからないこともあるでしょう。私が案内するから、折を見て親子で双葉町に来てください」

(編集部・福井しほ)

AERA 2023年3月27日号

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