「数百万回表示されているものも多く、へたなメディアよりも影響力がある。告発情報がたくさん集まるのは、警察やメディアよりも暴露系インフルエンサーのほうが身近な存在で、告発しやすい相手だからです」
過去には、老舗和菓子店の元社長が交通事故を隠蔽しようとしたことや飲食チェーンの衛生問題など、企業の不祥事を告発。いずれも謝罪に追い込まれた。
■「ネット私刑」に発展
「企業内部の不適切な言動などが明らかになり、是正されるという点では社会的意義があると思います。ただ、犯罪性がなかったり、エンタメ性が高かったりするものは微妙なラインです」
と山口さん。たとえば、著名人にまつわる「暴露動画」で人気を集めて政治家に転身、15日に除名処分を受けた前参議院議員のガーシーこと東谷義和(ひがしたによしかず)氏(51)の告発動画は、エンタメ性を意識したものが多いという。一方で、ガレソ氏の場合は「企業の不祥事告発など意義があるものとそうでないものが地続きになっている」と山口さんは指摘する。
「今回の震災をやゆする動画を含め未成年者の顔がわかる状態で公開することは、青少年保護の観点からも問題があります。自分自身が持つ影響力の大きさを意識することが大切だと思います」
告発系インフルエンサーが一度“炎上”ののろしを上げれば、SNS上には数え切れないほどの批判が殺到する。誹謗中傷や個人情報の拡散といった「ネット私刑」に発展し、当事者や周囲の人たちの生活をままならなくさせることもある。
■「制裁」への疑問も
実際、ガレソ氏の告発の影響は本人の手を離れたところに広まっている。
「ひっきりなしに電話がかかってきて、何件きたのか数えられません」
冒頭の男子生徒が通う学校の教頭は、そう打ち明ける。騒動以降、同校には苦情の電話が鳴り響いた。動画を見て傷ついたという声や、教育方針を批判するものなど100件以上にのぼり、なかには、
「当該生徒を出せ」
「学校に行くぞ」
などと脅迫めいた電話もあった。実際に来校したケースや生徒への直接の危害は確認されていないが、地元警察に相談し、在校生には下校時は複数名で帰るように指導もしたという。
「社会道義的に物議を醸すような発言をし、動画にしたという点を問題だと考え謝罪文を掲出しました。当該生徒はまだ学校に来ていませんが、『大変なことをしてしまった』とショックを受けています」(教頭)