またまた変わって、こちらは一夫多妻制のライオンの生態。「ライオンの群れを『プライド』と呼びます。そこで生まれたオスライオンは成長するとプライドを抜け、一頭で放浪の旅に出ます。別のプライドを見つけるとそこのオスに戦いを仕掛け、もし勝てばそのプライドを乗っ取ることが出来るのです。負けたオスはそのプライドを追い出され、全てのメスを奪われます。メスは新たなオスリーダーの子を宿すのです」というナレーション。また「ろうそく」に関係ないけど、かなり戦慄。オスライオン、つらいな。
そのライオンの狩りの風景。メスがガゼルの群れに強襲を仕掛け、弱ったところでオスがとどめを刺す。なんとなくお馴染みのシーン。ナレーターが「オスライオンに首根っこを咥えられたガゼル。命の灯火が消えようとしている。まさに……『ろうそく』の火が消え入るように」と続けた。また「ろうそく」かよ! そして、震えるガゼルの頭に2本の角……鹿の角。見るものに違和感を感じさせる、この既視感。あ! あの方の耳に嵌ってる、アレだ。
なんかもう、おなかいっぱいになってきた。それにしてもあのピアスはどこでいくらで売っていて、いつごろからしてるんだろう。お風呂や寝るときは外すのか。冠婚葬祭も着用? 寄席で前の席に座ってたら視界に入って気になるなぁ……なんてなことを考えつつ、そうだ、寝室の引き戸の滑りが悪いのでサンに「ろうそく」でも塗ろう。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!
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