「鶴と亀よ……もう私が話すことは何もない。何故ならお前たちは二人助け合い、見事にろうそくの火を消すことなく私のもとに運んだのだ。私が言いたかったのはまさにこの助け合いの心。この心さえ持っていれば、いかなる苦難も乗り越えることが出来る。お前たちは自らその境地に至ったのだ。もう私が教えることは何もないぞ!」と言って立ち去ろうとした。
「はぁ? なんそれ?」「俺たちをためしたのかよ?」「最初から口で言えばいいんちゃうん?」「なめんなや! 貴重な時間使わせやがって!」鶴と亀は怒りにまかせてその場で暴れ始めたので、お釈迦様も身の危険を感じ「えっ!? ストップ! ストップ! ちょい待ちっ!!!」と気合をかけた。すると鶴と亀はまるで金縛りにあったように動けなくなる。「釈迦に逆らう愚か者めが! 反省するがええ!」と鶴と亀はそのままろうそく立てになってしまったそうな……めでたしめでたし。と、ちょっと大胆にアレンジしてみたが、まぁこんなかんじみたい。あ、図らずもしばらく「ろうそく」関連のことを考えていた。いかんいかん。
テレビではガラパゴスゾウガメに代わって、ザトウクジラが悠々と泳いでいる。胴体に付着しているフジツボでさえも私に話しかけてくるかのように4K画面は美しい。「クジラって油がとれるんでしょ?」と横で我が子が囁く。「燃料にするために捕獲したそうだ」「ガソリン的な?」「灯りをつけるための燃料だね」「たとえば?」「ろうそく……」また「ろうそく」か!?
次にクロコンドルという聞き慣れない名の鳥が出てきた。「一夫一婦制のクロコンドルのコミュニティでは、夫や妻以外の個体と交尾をしないように仲間同士で監視し合います。もし『不倫』をした場合、その仲間が『不貞者』に対して嫌がらせをする……という驚くべき生態があります」というナレーション。「ろうそく」は関係ないけど、ちょっと戦慄。