春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
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 落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「ろうそく」。

【写真】2万匹に1匹の貴重な猫の「やんのかステップ」風ショット

 恐らく最近の話題の的「キャンドル・ジュン氏」からの「ろうそく」なのだろう。お題を出す担当者も人が悪い。騒動の件で何か書けってことなのか? この原稿にとりかかったら今度はキャンドルさんの過去の暴露記事まで出てきた。

 人ごとといえ、もうなにがなにやら。こういうときは一度心を落ち着かせたい。動画配信で自然モノの番組を観るのが一番。だというのに、ついついNetflix「サンクチュアリ-聖域-」を観てしまった(2回目)。やっぱり面白い。主人公役の一ノ瀬ワタルさん、素晴らしい。

 ようやく海外制作の「なんちゃらプラネット」みたいなタイトルの番組にいきつく。高性能カメラやドローンを駆使した撮影技術によって、生き物の生態が、まるで役者が演技をしているかのようにドラマティックに迫ってくる。私が子供のころ観ていた「野生の王国」や「わくわく動物ランド」とは確実に別次元だ。

 画面にはガラパゴスゾウガメ。カメの目の周りにたかっているハエまでもが主役級の美しさ。目をパチクリしながら何を思うのか、ゾウガメ。佇む姿に癒やされ、またサボテンを食む様子に魅入る。ムシャリムシャリ。脊椎動物では一番の長寿で平均寿命百歳超だそうだ。昔の人は「世界は亀の背中に乗っている」……と思っていたという。さもありなんという貫禄。亀といえば昔、祖母の家のお仏壇の亀が好きだった。本物ではなく仏具の亀さん。その背中には鶴が乗っている。「気をつけておつけよ」と言われて、マッチを擦り、亀の背中に乗っている鶴の嘴に咥えられた軸の先に立つろうそくに火をつけるのが私の役目だった。あのときは何も思わなかったが、そもそも何故ろうそく立てに鶴亀がモチーフとして使われるのだろう。

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灯りを持って来いや!