部下に成長してほしいと願っているなら、まずは自身が「一日教養、一日休養」といった姿勢で、生涯学習やリスキリングを実践する。
ただ、その際に1つ、あなたに向き合ってほしいことがあります。
自身が学ぶ姿を、「どれだけ部下に、見せられているか?」。
露骨にアピールしろと言いたいわけではないのですが、だからといって松下幸之助さんが説くように「休日(のうち少なくとも1日)は学ぼう!」をそのまま受け取ってしまうと、部下にあなたの「学びっぷり」が伝わらなくなってしまいます。
たとえば、あなたの職場のデスクには、仕事に活かしてきた本が何冊か置いてあったりするでしょうか。「うちはフリーアドレスなので、その例はもう古いです」と思うなら、では他にどのようなカタチなら、自身が学び、成長している姿を部下に見せられるのか、この機会に考えてみてほしいのです。
他の例としては、何かしらの資料作成法や会議術について学んだ際、実際にその資料を日々の業務で作っているか。あるいは、その方法で会議を行っているか。
今後への転機になるような気づきを促したいのであえてこんな書き方をしますが、「学びっぷり」を見せられていないばかりか、「学びっぱなし」で大して何も積み上げられていない姿を、意図せず部下に晒(さら)してしまっていないでしょうか。
自己完結的に学んでいるだけでは、マネジャーの学習観としては不十分です。
学びを役立て成長している姿が「部下にも見える」ように学ぶ。
このような組織貢献型の学習観でなければ、部下が成長したくなるような環境の醸成にはつながっていきません。
大切なことなので何度も繰り返しますが、マネジャーであるあなたは、部下にとって最も影響力のある環境です。
だからこそ、決して押しつけがましくならない程度に、自分が学んでいる姿を部下に見せていくことを、これから積極的にやっていきましょう。
とはいえ、ここまでを読んでみて、それでもまだ抵抗があるというなら……。
こうした姿勢で立ち振る舞っていないと、「部下にナメられてしまう」のです。言っていることとやっていることが一致していないマネジャーの言動に、部下はシビアに反応します。
信頼関係が不十分な状態では、部下にとって都合が良いだけのマネジャーになってしまう……。そうならないためにも、だからこその「見せる学習、見せる成長」なのです。
自己完結的な成長観を、どうかこの機会に乗り越えていってください。
●浅田すぐる(あさだ・すぐる)
「1枚」ワークス株式会社代表取締役。「1枚」アカデミアプリンシパル。動画学習コミュニティ「イチラボ」主宰。作家・社会人教育のプロフェッショナル。名古屋市出身。旭丘高校、立命館大学卒。在学時はカナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学留学。トヨタ自動車(株)入社後、海外営業部門に従事。同社の「紙1枚」仕事術を修得・実践。米国勤務などを経験したのち、(株)グロービスへの転職を経て、2012年に独立。現在は社会人教育のフィールドで、ビジネスパーソンの学習を支援。著書に『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』(サンマーク出版)、『早く読めて、忘れない、思考力が深まる 「紙1枚! 」読書法』(SBクリエイティブ) などがある。