そして今年5月、世界を転戦して行われるW杯2023の第2戦・フランス大会で、佐藤姉弟はミックスデュエットTRで銀メダル、FRで金メダルを獲得している。2回目の世界選手権を前に、国際舞台で確実に評価を得たといえるだろう。

 またジェンダーフリーを目指す国際オリンピック委員会の方針から、FINAは昨年12月、2024年パリ五輪からチーム種目の8人中2人まで男子の出場が可能になることを発表した。そして佐藤は、その直後から日本代表の練習に加わっている。

 昨年の世界選手権で佐藤が出場したのはミックスデュエットのみだったが、今年は新しい種目である男子ソロに加え、チームのアクロバティックルーティン(以下AR、五輪ではパリ大会から新たに採用される種目)にも出場する可能性が高い。練習中に起こした脳しんとうの影響でW杯ではミックスデュエットに専念している佐藤は、ARについては世界選手権が初めての公式戦となる。しかしリフトが多く入るARで、リフトの土台に男子のパワーを加えることは大きなメリットになる。また中島貴子ヘッドコーチには、日本チームに男子が存在することをアピールする意図もあるという。佐藤は、日本男子初の五輪代表への道を着々と歩んでいるのだ。

 大学1年生になった佐藤は179センチまで背が伸び、たくましい青年に成長した。数少ないAS男子選手としての道を歩いてきた“ウォーターボーイ”、佐藤陽太郎の熱い夏を見守りたい。(文・沢田聡子)

●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」

[AERA最新号はこちら]