今季のトロフィー数を見ると、ロドリが「成功」の筆頭格に浮上したと言える。21歳の2018年夏にビジャレアルから移籍金2000万ユーロ(約31億円)でアトレティコ・マドリードに移籍した翌2019年夏、グアルディオラ監督の獲得熱望を受けて移籍金7000万ユーロ(約109億円)でマンチェスター・シティに加入。当時のクラブ最高額だったが、その後はアンカー役として安定した働きを続け、3シーズン目となる今季はチームの心臓として力強いパフォーマンスを披露。そして欧州CL決勝・インテル戦では値千金のゴールを決め、欧州CLのMVPを受賞した。スペイン代表としてもネーションズリーグ優勝を飾り、決勝のマン・オブ・ザ・マッチに選出。その充実ぶりを見ると、ロドリ個人にとっても移籍は間違いなく「成功」だった。
彼ら以外にも新天地で活躍する選手は数え切れないほど多くいるが、移籍金との費用対効果を考えると、大型移籍になればなるほど「成功」の例はそれほど多くない。むしろ「失敗」の方が目立つ。
近年の移籍の中で最も「失敗」の烙印が押されているのが、エデン・アザールだ。世界屈指のドリブラー、アタッカーとしてチェルシーで7シーズンにわたって活躍していた男は、2019年夏に移籍金1億1500万ユーロ(約179億円)でレアル・マドリードに加入した。当時28歳、まだまだ全盛期を謳歌できるはずだったが、初年度から度重なる故障に苦しみ、復帰してもピッチに立っても低調なパフォーマンスに終始した。幾度か復活を期待された時期はあったが、その度に故障離脱。さらに体重増加も指摘された中で、プレーの切れ味と首脳陣、サポーターの信頼を失っていった。在籍4シーズンでリーグ戦通算51試合出場、わずか4得点。契約が解消される形で今季限りでの退団が決まった。
その才能には疑いの余地のないコウチーニョも「失敗」だった。リヴァプールで6シーズンにわたって活躍して“アイドル”としてサポーターから愛されていた男は、2018年1月に移籍金1億3500ユーロ(約210億円)でバルセロナに加入した。だが、スペインの地でも持ち味であるテクニックの高さが埋没し、適応ポジションにも苦しんでインパクトを残せず。高額な移籍金からサポーターの目線も厳しかった。結果、クラブは何年にもわたってコウチーニョの“貰い手”を探すこととなり、最終的に2022年夏に2000万ユーロ(約31億円)でアストン・ヴィラに売却。2013年冬に1300万ユーロ(約20億円)で獲得したリヴァプールにとっては“最高の利益”を生んだ選手だったが、バルセロナにとっては多くの負債を抱えることになる“最悪の契約”となった。