北国に住むドライバーなら、一度は冬道の恐ろしさを経験したことがあると思います。車が止まれない、交差点で発進できない、横にすべる、雪にはまって動けない…。冬は怖いから運転しない、という人もいるくらいです。では、北国の冬の道路は実際にどのような状況なのでしょうか。

これが凍結した道路。一面の氷はまるでスケートリンクのよう。人も車も命がけで通ります。
これが凍結した道路。一面の氷はまるでスケートリンクのよう。人も車も命がけで通ります。

夜中に大雪が降ると、翌朝はどこまでが道路なのかわからない、真っ白な世界

夜中のうちに雪がどっさり降ると、外は真っ白な世界。「うわぁ~、銀世界、ステキ!!」 なんて思うのは、雪を珍しいと思う観光客の方。朝早く車で出かけなければならない人にとって、大雪の翌朝の道路は恐怖です。
まず、歩道と車道の区別がつきません。歩道がない道路では、どこからどこまでが道路なのか、路肩がわかりにくい状態です。このような道路では、吹きだまりに突っ込んだり、側溝にはまったり、雪に埋もれたガードレールにぶつかったりすることもあります。
そこで、除雪車が入るまでは、道路に立っている赤白のポールが目印になります。これは「スノーポール」というもので、除雪車が除雪をするときに、路肩がどこからなのかがわかるように立っているものです。
また、北海道などではスノーポールではなく、標識の高さくらいのところから、下に向いた矢印型の標識がいくつも立っています。これは「矢羽根」といって、矢印の真下が道路の端を示しています。赤と白のしましまのものが多く、最近ではLEDで赤く光るタイプもあり、この矢印も道路の端の目印になります。

タイヤに踏み固められた雪道は、ツルツルの「アイスバーン」

大雪の後は、除雪されたり、タイヤに踏み固められたりして、道路は平らになります。が、平らになってから怖いのは「アイスバーン」です。アイスバーンは大きく3つに分けられます。
●雪が踏み固められた「圧雪アイスバーン」
通行する車に新雪が何度も踏み固められ、ツルツルになってしまった路面のことです。夜中に雪が降った翌日の午前中などによく見られます。圧雪で白いので、いかにも「雪国に来た」という感動的なイメージとは裏腹に、ツルッとタイヤがとられることもあるので、運転には注意が必要です。
●タイヤに磨かれてツルツルになった「ミラーバーン」
スタッドレスタイヤに磨かれてツルツルになった路面のことです。特に交差点の停止線のあたりは発進と停止が繰り返されるほか、車の熱で路面が微妙に解けたり凍ったり磨かれたりして、最も滑りやすくなっています。信号待ちで先頭になってしまうと、路面がツルツルなので、タイヤが空転してなかなか発進できない、という怖い経験をされた方も多いと思います。信号待ちではなるべく先頭になりたくない、というのがドライバーの本音なのでは…。
●一見濡れただけに見える「ブラックアイスバーン」
アスファルトが見えていて、一見濡れた路面のように見えますが、実は表面がうっすら凍っている状態です。除雪が行き届いた道路はアスファルトが見えていて、昼間は濡れているだけの路面ですが、夕方から気温が低くなると、そのまま凍ってしまいます。昼間と同じスピードで走っていると、ブレーキがきかない…ということも起こります。また、昼間でも、日なたは解けていますが、ビルの陰など日陰に入ると急に凍っている、ということもあります。運転の際には路面の状況をよく見ることが必要です。

究極のツルツル路面、車道も歩道もすべて氷で覆われる恐怖

上の写真を見てください。これは、道路に水があふれているのではありません。道路一面が氷で覆われている状態です。北海道の日陰の路地などによく見られます。こうなると、人も車も通行するのは命がけです。さらに、写真の道路はほぼ平らですが、凍った道路の上り坂の途中で止まらなければならなくなり、そこから発進となったら…。考えただけでゾッとしますね。
このようなツルツル道路を車で安全に通行する方法は、徐行運転しかありません。ふんわりとブレーキを踏んで、滑らずに止まれるくらいの速度が目安です。急発進、急ブレーキ、急ハンドルは絶対にしてはいけない、ということはもちろん、通行する人との距離も充分にとりたいです。

まだまだ怖い冬道、溝の深い轍(わだち)や、恐怖のマンホール!?

少し暖かくなって雪が解けてくると、道路がシャーベット状になります。すると、タイヤによって轍(わだち)ができます。車は轍のほうが走りやすいので、みな轍を走り、溝はますます深くなります。しかし、夜になると冷え込むので、轍は深い溝のまま凍ってしまいます。こうして轍は深くガッチリと固まってしまいます。轍がある道路沿いに車庫があり、轍に対して直角に車庫入れをしなければならないドライバーはもう、必死です。一発でうまく車庫に入れないと轍にタイヤがはまり込んで、前にも後ろにも進めない…ということになりかねません。また、車がやっとすれ違えるくらいの幅の道路で、轍が3本しかない、ということがあります。もし対向車が来たらどうやってよけよう…とドキドキしながら運転する人も多いのでは。
さらに、路地などでは突然深い穴が現れます。そう、マンホールのくぼみです。マンホールから出る熱によってマンホールの部分は凍らないので、おのずとそこは穴になり、深さは20cm以上になってしまいます。そこにタイヤがはまると出られなくなることもあるので、上手によけながら走りますが、意外とマンホールは多いものです。右に左によけていても、ボコッとタイヤが落ちてしまします。その衝撃で車のバンパーが壊れたり、ドライバーが天井に頭をぶつけることもあります。
道路が滑らないように行政側は、除排雪はもちろん、道路に砂を撒いたり、塩化カルシウムなどの融雪剤を撒いたり、ロードヒーティングを入れたりなどの努力もしていますが、道路全体を完全に滑らなくするのは無理なことです。
冬道での運転の鉄則は、急発進、急ブレーキ、急ハンドルをしないこと。運転のすべてをゆっくり、ふんわりにすることです。北国のドライバーは冬の路面の特性を知っているので、ツルツル路面での運転はある程度慣れていると思いますが、観光などで北国を訪れる方などは、凍結路面の恐ろしさをある程度「予習」して、安全運転を心がけたいものです。