石崎弁護士は、「飲食店側の本音としては、ミスがあった場合は店に直接伝えてほしいと考えていると思います」と話す。特に丸亀製麺のような大手チェーンの場合、店舗に異物混入のクレームが入れば本部の品質管理部門に共有されるし、「お客様センター」のような客の相談窓口もある。ミスが事実であれば原因を究明した上で、業務フローを改善する必要が生じるため、クレームを“スルー”することは考えづらい。

 ただ、一方で「飲食店側もSNSを使い商品をPRしたり、マーケティングに役立てたりするなど積極的に活用している面があり、不都合な時だけ『やめてください』とは言えないと思います。その点はとても難しい問題ですが、諸刃の刃であることを飲食店側も理解して、SNSというツールと向き合う必要があると思います」とも。

便乗犯や真偽不明の投稿も

 カエル混入の事案に対する丸亀製麺の動きは早く、ヒット商品にもかかわらず販売を一時休止する措置をとった。石崎弁護士は、「思い切った対応です。勇気が必要だったと思いますが、対応としては正解だったと思います」と話す。

 万が一、商品の販売を続けた場合、同様の異物混入が再び発生する可能性も完全には否定できず、二度同じ事が起きた場合その場合のダメージは計り知れないからだ。また、同じ商品に対し、偽の異物混入動画を投稿するなどの「便乗犯」が現れる可能性もある。実際、SNSでは飲食店のミスを指摘する、真偽不明の投稿が散見されるという。

 石崎弁護士は、「虚偽だった場合、投稿者は偽計業務妨害罪に問われる可能性や、民事上の損害賠償責任を負うこともあり得ます。ただ、仮に虚偽の投稿だったとしても、その店のブランドや商品のイメージは損なわれてしまいます」として、こう続ける。

「SNSで炎上してしまった場合、炎を消すのではなく、他に延焼させないことが大切になります。下手に言い訳がましい対応や発言をすると、さらに叩かれてしまう。逆に、迅速にしっかりとした対応をすれば、叩かれ過ぎではないか、という反応につながることもあります。店側は危機管理の重要さについて、より強く認識しなければならない時代だと考えています」

 時にヒステリックになり過ぎるネット社会。ミスが“さらされる”流れは、この先も続くのかもしれない。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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