
全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2023年6月19日号にはFNCコロンビアコーヒー生産者連合会 東京事務局 コーヒーマネージャーSantiago Sabogalさんが登場した。
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年間約2万トンのコロンビアコーヒーの生豆をプロモーション、販売するのが仕事だ。内容は品質管理、財務管理、プロモーションと多岐にわたる。
1961年設立の日本事務局へ配属されたのは2018年。アジア市場に関する知識の習得や、顧客との関係構築をしたいと、自ら希望した。
初めて日本に来て驚いたのは、自動販売機やコンビニに並ぶコーヒーの種類の豊富さだった。ネルドリップで淹れるのを好む人が多いのも、日本ならではだと感じた。休日にお気に入りのカフェで過ごす一方、平日は仕事の合間を縫って、チェーン店のコーヒーをテイクアウトするといったように、飲み方も生活スタイルによって異なり、それに沿った商品がちゃんと手に入ることも面白いと思った。
早々に、大手飲料企業から新製品用に産地探しから協力してほしいと相談されたが、味や豆のサイズから品質に至るまで、要求のきめ細かさに驚愕した。コロンビア本部と相談し、ふさわしい産地を提案。現地へと赴き、いくつかの生産者を選び、サンプルを作り、試飲を幾度も重ね、ようやく豆が選ばれた。
次に輸入の手続きに入る。コーヒー豆の収穫は自然に左右される。さらに南太平洋を船で渡ってくるため、約束した期日に到着しない可能性もある。状況を的確に把握しておくには、生産者との連携が重要であることと、クライアントへ常に報告することの、双方へのコミュニケーションが大事なことに気づいた。
1年がかりのプロジェクトとなったが、スーパーで商品が販売されているのを目にした時は感極まった。ラベルには産地の名前も記載されており、普段は商品を見ることがない生産者に送ると、とても感激したと礼を言われた。
顧客と接していて気づいたのは、日本ではコーヒー豆の背景にあるストーリーに関心を持つ人が多いことだ。
だからこそ、生産者は誰がどんな風に飲んでいるか知ることで意欲が高まり、消費者にも、生産者の顔を知ってもらえたら、よりコーヒーを楽しんでもらえるのではないかと感じている。
今では、年間で40~50の企業と取引をする。目下の楽しみは、コーヒーショップで知っている農園の名前を見つけること。その数を今後も増やしていくのが夢だ。(ライター・米澤伸子)
※AERA 2023年6月19日号