■失敗は許されない

 5月以降、前出のデサンティス氏(共和党)、マイク・ペンス前副大統領(同)など、大統領選予備選候補者の出馬表明が相次いでいる。政界やメディアの目が大統領選に集まり、来年11月の投開票日まで1年半もの長きにわたり、注目度が高まっていく。

 トランプ氏が深めた保守とリベラル、そして共和党内でのトランプ派と穏健派の間の「分断」は深まるばかりだ。それだけに、大統領候補は、多様な有権者にアピールするための時間と資金を注ぎ込むことになる。その中で、ウクライナで起きている悲惨な戦争は、ますますバイデン政権内での政策における優先順位が低くなるのは間違いない。しかし一方で、世界的にはウクライナ政策で失敗が許されないのも確かだ。国内外からの厳しい手かせ足かせがバイデン政権にはかけられている。

 また、ウクライナ南部では巨大ダムが決壊し、住民数万人が影響を受け、死者も出ている。今後数十万人の飲料水供給にも影響する。このような悲惨な事態も「レッドライン」ではないのか。警察国家・米国の行動が後手に回っている印象を与えている。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)

AERA 2023年6月19日号