トランプ政権の誕生や、米連邦議会議事堂襲撃事件などに揺れる米国。長期化するウクライナでの戦争の和平調停は期待できそうにない。AERA 2023年6月19日号の記事を紹介する。
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「(ロシアの侵略戦争開始から)1年後もキーウはここに立ちそびえている」「ウクライナも生き残っている。民主主義もだ」
バイデン米大統領はことし2月20日、ウクライナ電撃訪問の際、こう述べた。これにグッときた米国市民はかなりいたはずだ。
短いセンテンスながら、ウクライナ国民の強靱さを称えた。米国と西側諸国の支援の成果も盛り込んでいる。ポーランドからキーウまで10時間も電車に乗るというリスクの高い訪問だった。しかも2月24日というロシアによる侵攻から1年を直前に決行した。
「ウクライナは立ち向かっている。民主主義は立ち向かっている。米国ではアメリカ人があなたたちとともに立ち上がっている」と、バイデン氏は連帯を表明した。
一方で、この日は米国では「大統領の日」という祝日。ジョージ・ワシントン初代大統領らの誕生日に想いをはせる祝日に、バイデン氏は、世界で最もホットな戦地ウクライナを訪問した。これを「プレジデンシャル(大統領にふさわしい)」な行動だと思う米国民が多くいたのは間違いない。
■沸くトランプ陣営
ロシアという大国に立ち向かうため世界で最大の支援をしている米大統領の侵攻後初のウクライナ訪問。これは大ニュースだ。同時に、ホワイトハウスは、バイデン氏と民主党の支持者を意識することも忘れなかった。
さらに、広島で行われた主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、ウクライナのゼレンスキー大統領に米戦闘機F16の他国による提供の容認と訓練を確約した。5月31日には、推計3億ドル(約420億円)相当の武器などをウクライナに向けて新たに提供すると発表した。首都キーウを含むウクライナ全土でロシアによる空襲に対抗するため、防空システムに関する最新の軍事支援を約束している。