「その茨城県の農業を支えているのがベトナム人やスリランカ人です。もちろん、技能実習生も多いですが、不法労働者もいます。いまや農家は高齢化が進んでいて、働き手がいない状況ですから、彼らは貴重な労働力です。日本で働く最終地点のようなところに、農業があるというのはかなり問題ですが、仮に不法労働者を摘発しようにも、彼らが農業を支えているわけですからできないんです」

 日本のあちらこちらで外国人の労働力がないと立ち行かない一方で、彼らの置かれた立場は厳しい。本書の中で印象的だったのは、ある日本人の「外国人は、透明な存在なんですよ」という言葉だった。その言葉の後に、室橋さんはこう綴る。

<自転車で道行く姿があっても、工場や畑や介護施設や建築現場で働き、地域を支えていても、日本人の意識の中には入ってこない。視界には映らない。関わり合おうという人はあまりいない。(略)それが354の現実でもある>

 エスニック国道を取材することで、室橋さんは日本の屋台骨を支えている「見えない人々」の姿を可視化した。そうして見えてきたものがある。

「結局、移民問題は、外国人だけの話ではなくて日本人の話でもあったのです。移民取材を進める中で、労働者を大切にしてこなかったという日本全体の縮図みたいなものが見えてきたことは意外でした」

(編集部・三島恵美子)

AERA 2023年6月12日号

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