『Crosby Stills & Nash』 ※1969年のデビュー・アルバム
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『Crosby Stills & Nash』 ※1969年のデビュー・アルバム
『Crosby Stills & Nash Box Set』 ※4枚組のベスト盤、未発表曲多し
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『Crosby Stills & Nash Box Set』 ※4枚組のベスト盤、未発表曲多し
『Csn 2012』 [Blu-ray] ※最新のライヴ映像
『Csn 2012』 [Blu-ray] ※最新のライヴ映像

 ものには、名前がある。
 人類の文化のなかで、さまざまなものやことに名前をつけるという行為は、根源的に重要なことであり、文化的に最初の作業といえる。名前がなければ、誰かとそれについて語り合うこともできないわけだ。しかし、このことについて語りはじめると、わたしには荷が重すぎるテーマなので、軽い話からはじめたい

 たとえば、わたしの名前は「小一実(こぐまかずみ)」である。世界に一人しかいない、はずである。確認はしていない。
 自分の名前を名乗ると、「おがわさんですか?」とか「おぐまさんですか?」などと聞き直されることが多い。「こぐま」という名字が聞き慣れないからだろう。
 そんなときは、「動物のこぐまです」とか、「小さいくまです」などと、説明するのだが、電話の向こうで、しーんとされることもあるし、明らかに笑っているのがわかることもある。向かい合って対面しているときには、ポカンとした顔をされることもあるし、「かわいらしい名前ですね」などとお愛想を言われることもある。
 魅力的な女性に、「かわいらしい名前ですね」などと言われると、つい、「いくつになっても、大人になれなくて」などと、受けを狙ったようなことを言ってしまうこともある。
 この小熊一実という名前とは、生まれてまもなく親に名付けてもらってから、50年以上もつきあってきたことになる。
「名は体を表す」というけれど、わたしの名前は、う~ん、悪いやつではないが、大物という感じではないような気がする。いかがでしょう?

 人の名前と同じように、ロック・バンドの名前にも由来がある。
 有名なところでは、ビートルズの名前の由来。
 ジョン・レノンが憧れていた眼鏡をかけたロックン・ロール・スター、バディ・ホリー&ザ・クリケッツにちなんで、昆虫の名前をつけようとしたという。そして、カブト虫Beetlesに、音楽のビートBeatをかけて、「The Beatles」としたという。
 
 こういう名前は、メンバーそれぞれの個性が集まって、ビートルズというひとつのバンドを作り上げているという印象がある。

 いっぽうで、今回紹介する、クロスビー、スティルス&ナッシュ(以下CSN)のように、メンバーの名前を連ねたバンド名もある。
 CSNは、デビッド・クロスビー、スティーヴン・スティルス、グラハム・ナッシュの3人の名前をつないで、グループ名にしたわけだ。
 これに、ニール・ヤングを加えると、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(CSNY)となる。合理的でわかりやすい。

 同じ方法論でつけられたバンド名では、エマーソン、レイク&パーマーとか、元イエスのメンバーにより結成されたアンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウというバンドがある。ABWHの場合は、「&」が入っていないが、語呂の問題ではないかとわたしは思う。4人の名前がつづくと、たしかに長い。
 
 さて、この名前を連ねるバンド名は、ビートルズのようなバンド名と比較すると、グループとしての一体感というより、メンバーの個性が優先されているような印象を受ける。つまり、一つのバンドを構成するミュージシャンたちというより、ミュージシャンが集まってつくったバンドといったかんじだろうか。

 それぞれのバンドのスタイルに、それぞれのおもしろさがある。
 そのなかで、CSNやCSNYは、個性的なアーティストの集まりという魅力を代表していると思う。

 まず、はじめに知っておいてほしいのが、全員が自立して、ソロとしても魅力的なミュージシャンたちであると言うこと。
 デビッド・クロスビーは、元バーズのメンバーだし、グラハム・ナッシュは、元ホリーズのメンバー、スティーヴン・スティルスとニール・ヤングは、元バッファロー・スプリングフィールドのメンバーだった。
 それぞれのバンドがどれだけすごかったのかを知りたい方は、バンド名などで検索してほしい。できれば動画で音楽も聞いてみることをオススメする。みなロック史に残る名曲、ヒット曲をもっている。

 この4人のおもしろさは、4人の組み合わせをいろいろ変えて活動しているところだろう。
 ヤングが入ったり消えたりしてCSNYになるのもひとつ。クロスビー&ナッシュで活動していた時期もある。
 クロスビー&ナッシュにヤングが参加したこともある。スティルス・ヤング・バンドというのもあった。また、コンサートの中でも、それぞれのソロのようなコーナーもある。
 また、ミュージシャン同士で、だれかとだれかが仲が悪いという話もある。
 女性関係も華やかで複雑だ。《組曲:青い目のジュディ》のジュディはジュディ・コリンズのことだ。ほかにも多くの女性たちが彼らの前を通り過ぎていっている。ゴシップ記事のようなことを書くのはさけているのだが、実は、音楽なんてえのは、好きな女の子を口説きたくて歌ったり、愛していると伝えたかったり、捨てられてさびしいよ、と歌ったものが多いのだよ。それらが、名曲になっていくのだ。

 そんな音楽を作り続けたウッドストック世代の元若者たちが、また、日本にやってくる。ヤングがいないのは少し残念だが、あの3人のコーラスを生で聴けるのはうれしい。グループの誰かがドラッグでやられたり、病気をしたりとの話を聴くが、またいっしょにステージに立つというのは,やはり音楽を通じて集まった仲間ゆえの絆のなのだと思う。[次回2/18(水)更新予定]

■公演情報はこちら
http://www.udo.jp/Artists/CSN/