同じリリーフタイプの投手では清宮虎多朗(楽天)も楽しみな存在だ。2018年の育成ドラフト1位で楽天に入団。2021年にはトミー・ジョン手術を受けて長期離脱となったが、その期間にフィジカルトレーニングに励んだ成果もあってか実戦復帰した昨年は150キロを超えるストレートを連発するなど大幅なスピードアップを果たした。

 今年は二軍で10試合に登板して1勝0敗6セーブ、防御率2.45と結果を残している。11回を投げて6四球とコントロールはまだ不安定だが、長いリーチを生かした豪快な腕の振りは大きな魅力だ。トミー・ジョン手術から復帰してまだ2年目ということを考えるとここからさらに状態を上げてくることも期待できるだろう。

 スピードのあるユーティリティプレイヤー候補として挙げたいのが辰見鴻之介(楽天)だ。西南学院大では全国的には無名の存在だったものの、抜群の脚力が評価されて昨年の育成ドラフト1位で楽天に入団。二軍ではセカンドのレギュラーに定着し、ここまで26試合に出場して28安打、6盗塁、打率.322とチームを牽引する働きを見せている。大学時代に肩を手術したことでスローイングは不安視されていたものの順調に回復しており、プロ入り後は脚力を生かして外野の守備にも就くなど器用さがあるのも大きな持ち味だ。投手の清宮とともに、低迷するチームが浮上するための起爆剤として期待したい選手だ。

 野手で足のスペシャリストとしては村川凪(DeNA)、鈴木大和(巨人)、阿部和広(日本ハム)なども候補となる。この中で最も支配下に近いのは今年二軍で3割近い打率を残している村川という印象だが、高校卒2年目とまだまだ若い阿部も昨年と比べて成長を感じるプレーを見せているだけに楽しみな存在だ。開幕からリードオフマンとして結果を残してきた五十幡亮汰が故障で離脱となっただけに、持ち味のスピードをアピールして支配下契約を狙いたいところだ。

 今年は育成ドラフト4位ルーキーの茶野篤政(オリックス)が既に外野の一角に定着するなど、育成ドラフト出身でも一気にレギュラークラスへと駆け上がるケースは増えている印象を受ける。残りのシーズンでも育成から支配下登録を勝ち取り、一軍でも持ち味をアピールする選手が出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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