1922年に創刊し101年の歴史を刻んだ「週刊朝日」は今号をもって休刊します。休刊にあたって似顔絵塾の塾長、松尾貴史さんからメッセージをいただきました。
【歴代ベスト表紙は?】山口百恵、吉永小百合、夏目雅子…篠山紀信「伝説の表紙」72枚はこちら
* * *
「似顔絵塾」を引き継がせていただいて約1年半。あっという間でしたね。
似顔絵というのは不思議なもので、デッサン力が生かされすぎると、似顔絵ではなくて肖像画のようになってしまう。似顔絵はものまねと一緒で、対象の特徴がデフォルメされた中に、どこか批評性や毒っ気がないといけない。そうした要素があるからこそ、これまでこうやって人気を博してきたのだと思います。
ものまね芸人のことを、英語で「インプレッショニスト」と言うんです。やっぱりインプレッション(印象)って大事で、入選作を選ぶときは、ファーストインプレッションを大事にしていました。第一印象で候補を集めて、今度は判じ物みたいに、誰だろうとか、何だろうと考えながら絞っていく。迷ったときは、造形がきれいなほう。そんな基準で選んでいました。
投稿者の皆さんは、強烈な個性を持った方ばかりでしたね。軍事評論家の江畑謙介さんとか、「なぜ今、この方を描こうと思ったのか」という人選が多くて、動機が知りたいと好奇心が湧きました。まあ、私がそういう作品を選びがちなのも見抜かれていたでしょうから、難しいところですが。
驚かされたのは、まったく別の画風の作品を同じ人が描いていることがあることです。ピカソも若い頃と年をとってからでだいぶ作風が違いますが、同じ時期に応募している中で作風が多岐にわたるというのは、すごい力量だと思います。
似顔絵塾は、なんといっても創始者の山藤章二先生が象徴のような存在です。和田誠さんと並ぶ日本のイラストレーターの双璧で、ラジカルな批評精神を持ちながら、洒脱で洗練された作品の世界を築いてこられた。そのお仕事の一つを短期間でも受け継がせていただいたのは本当に光栄でしたし、山藤先生の名前を汚さないようにと、そればかり考えていました。
少し前に高田文夫さんと桂南光さんに会った時に、この連載を引き継いだことをものすごく喜んでくれて、「余人をもって代えがたい」と言ってくれたのは、うれしかったなあ。この仕事を任せていただいて、私も本当に楽しかったです。