■100京の組み合わせ

──具体的にどのようなサービスが生まれていますか。

 例えば、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を搭載したヘッドセットは色盲の人に配慮した色合いにしています。メタバース上で使う自身の分身のアバターは、目の色や髪形など100京(1兆の100万倍)通りの異なる組み合わせができ、他者と差別化できます。日本では東京大学と連携し、福祉分野で「VR旅行」の取り組みも始まっています。VR体験を通じて社会的な孤独感に苛(さいな)まれる年配者は減るのではないでしょうか。

──最近では、メタは約2万人の従業員を解雇しています。

 個人的につらいと感じています。一方で、より良く、より影響力のある製品の提供に注力するための決断だったとも考えています。多様性のある企業となり、世界中の人々が利用できるサービスを提供するという大目標は変わっていません。

──今後のビジョンを教えてください。

 大前提として、メタバースを使うかどうかは個人の自由であること、そして、仮想空間が現実に取って代わることは起こり得ないと考えています。

 私たちはメタバース事業を始めた当初から、多様性・公平性・包括性を取り入れることを最優先事項に据えてきました。

 将来、すべての人々がメタバースに平等に参画でき、平等に恩恵を受けられる未来になっているはずです。

(構成/フリーランス記者・小野ヒデコ)

AERA 2023年5月15日号