もう何を書いていたかも忘れてしまいそうな結構な分量を、「ウンチ」と「シュトッド」と「逃げ恥」に費やしてしまったわけだが、そして「逃げ恥」には一切費やしておらず、とんだトバッチリごめんねと新垣と源くんに謝りたいわけだが、これ以上の脱線は本当に何が書きたかったか忘れてしまうので控えよう。
先に書いた(もう、随分と先)堤さんが初めて俺の脚本を演出してくれた24年前の公演の前年、なんかもう急に不条理なコントを書きたくなり、下北沢の小さな小屋で「猫は暗闇でも目が見える」という公演を打った。
これがもう地獄絵図のような悲惨な結果に終わった公演で、コントと銘打ってるのに5日間の公演で客が誰ひとり笑わないという、たとえるなら、世に言う、ごめんなさい特に何も思いつかないが、とにかく、俺にとって、打ちひしがれるような結果となった公演だった。
その公演を見に来ていた堤さんと終演後、ロビーで話した。話したと言っても、俺の方は悲惨な結果に茫然自失で、恐らく死んだ魚のような目をしていたに違いない。
「二朗くん、ちからわざ、次はいつやるの?」
「いや、もう、ご覧のような結果ですし、もう、ちからわざはやめようと思います」
事実、本当にやめようと思っていた。すると堤さんは次にこう言ったのだ。
「え? 二朗くんの書くホン、すごく面白いのに」
な、な、なにっっーーー!!!!
5日間、計7ステージ、見事に誰も笑わなかったコント脚本が「面白い」だとっっーーー!!!!
ちなみに堤さんは演出だけでなく、脚本家でもあり、数多の舞台戯曲を生み出してる人で、今なお多くの演劇団体が上演を熱望する「煙が目にしみる」という名作戯曲を書いた人。俺にとって雲の上のような人だ。
嬉しいというより、信じられない、という気持ちでいたら、その数日後、堤さんから電話があった。
「二朗くんの書くホン、面白いからさ、次の公演、俺が演出しようか?」