【深ヨミ】米津玄師『馬と鹿』自己最高の初動となったシングルを過去作と比較
【深ヨミ】米津玄師『馬と鹿』自己最高の初動となったシングルを過去作と比較

 9月23日付のBillboard JAPAN “Top Singles Sales”で、米津玄師の『馬と鹿』が431,270枚を売り上げ2位を獲得した(集計期間2019年9月9日~2019年9月15日)。

 『馬と鹿』は前作『Flamingo/TEENAGE RIOT』から約10か月ぶりとなる10枚目のシングルで、表題曲はTBS日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』の主題歌として使用された。本タイトルは2010年代のソロアーティストの初動セールスとしては、それまでの首位であった自身の前作『Flamingo/TEENAGE RIOT』の持つ240,077枚を大きく更新している。2010年代ソロアーティストの初動売り上げランキングは以下の通り。

◎2010年代ソロアーティストシングル初動ランキング
1位『馬と鹿』米津玄師(431,270枚)
2位『Flamingo/TEENAGE RIOT』米津玄師(240,077枚)
3位『Lemon』米津玄師(205,381枚)
4位『Family Song』星野源(193,599枚)
5位『ミステリー ヴァージン』山田涼介(167,955枚)

 トップ5は全て男性アーティストという結果となっているが、中でもトップ3を独占した米津玄師の強さが目を引く結果となった。

 初動のみでなく累計販売枚数に目を向け、米津玄師の2017年以降に発売された5作のシングルについて、初動と累計販売枚数の比較をSoundScanJapanの販売データを使用し調査してみた。図1(billboard-japan.com/d_news/image/80198/2)がその結果で、左から右へとリリース順となっている。これを見ると、初動(図中:紺)については右へ行けば行くほど大きくなり、常に前作を越す販売を更新し続けているのが見て取れる。一方、累計販売枚(図中:水色)をみると、『Lemon』が大きく伸びている事がわかる。実際『Lemon』は発売から1年半を経過しているにも関わらず、シングルセールスにおいては週間販売枚数が2,000枚を切った事がなく、Billboard JAPAN “HOT 100”においても15位以内をキープし続けるなど、超ロング・セールとなっている。

 ここで、『Lemon』の購買層が地域的にどのように変化していったかをSoundScanJapanの店舗での購買数を元に調査したのが図2(billboard-japan.com/d_news/image/80198/3)である。関東地方が37.8%から34.5%と大きくシェアを減らす一方、近畿(11.5%→12.2%)、中国(5.6%→6.2%)をはじめとして、他の地方は伸びているのがわかる。また、累計販売枚数には関東地方が多く出ている初動の販売枚数も含まれている(現時点では34.5%)ため、現在『Lemon』を購入している層はかなり地方に多くなっていると予想される。

 続いて、米津玄師のシングル直近3作の初週の地域別の販売比率を調査したのが図3(billboard-japan.com/d_news/image/80198/4)である。この表には、比較対象として2018年の年間の店舗で販売された全シングルの地域別販売比率も追加している。全シングルと比較すると、やはり地元の四国では人気は絶大で、全シングルは四国地方では1.6%の販売比率であるが、米津玄師の直近3シングルのうち四国の比率が最も高い『Flamingo/TEENAGE RIOT』は5.9%で中国地方(4.7%)や北海道(5.1%)を超える驚異的なシェアを示しており、『馬と鹿』も4.2%とかなり高い値を示している。

 元々、四国をはじめとした西日本が強い傾向があったが、『Lemon』、『Flamingo/TEENAGE RIOT』、『馬と鹿』とリリースを重ねる毎に、更に西日本(特に近畿・中国)が増える傾向にある。この推移は『Lemon』の初動→累計の動きと一致しており、『Lemon』で獲得した人気がそのまま『馬と鹿』のセールスにも繋がっている事が確認できる。また、『馬と鹿』については西日本だけでなく北海道も4.2%(『Lemon』)→6.0%(『馬と鹿』)と販売比率を伸ばしている。これは北海道出身の大泉洋が主演している『ノーサイド・ゲーム』の主題歌である事も影響していると考えられる。

 これからも更に人気を増やしセールスを伸ばし続けられるのか、米津玄師の作品から目が離せない。