長山さんが描いた「筆文字メニュー」の作品(写真/長山さん提供)
長山さんが描いた「筆文字メニュー」の作品(写真/長山さん提供)

 出品にあたっては「あまりお金のことは考えず、顧客満足を優先している」という長山さんは、こう話す。

「これまで数百店という店を見てきたから、飲食店の人たちの悩みは目に浮かぶんです。僕はもう引退に近い年齢だし、ガツガツ稼ぎたいわけでもない。自分が役に立てることで助けてあげたいという思いがあります」

飲食コンサルの「強み」

 飲食店ではメニューの改定が年2回ほどあり、それに加えて季節ごとに変わるメニューもある。タイムリーなメニュー替えは店の活性化に繋がるが、大手ファミレスのようなチェーン店のメニューブックの切り替えは1店舗あたり100万円かかることもある。そうなると個人経営や中小企業が度々できる金額ではない。数千円から数万円で提供することで、頻繁なメニュー変更を可能にして飲食店を応援したい、と考えている。

 単にメニューを書くだけではなく、「売りはなんですか?」「どんなお客様がターゲット?」など聞き取りし、ブランドイメージを一緒に練ったり、キャッチコピーをメニューに入れ込むこともある。飲食コンサルの経験があるからこその強みだ。

長山さんの作品。最初は「こういうものがあればいいのに」と思い、描き始めたという
長山さんの作品。最初は「こういうものがあればいいのに」と思い、描き始めたという

 出品ページにポートフォリオを載せていて、気に入ったお客さんが注文してくれる形式のため、お互いのイメージがズレにくく、受注後は3往復ほどのやりとりで制作が進む。ただし、顔を見て話せるわけではないので、やりとりする際の文章にはかなり気を使う。

「家内に見てもらうこともあるし、ここまで言わなきゃいけないかな、というぐらい丁寧に説明するようにしています」

「楽しくなければ仕事じゃない」という長山さん。本業のコンサルティングではエリア内で競合となる店から受注はしにくいが、ココナラでは全国から受注ができるのも嬉しいという。

「70歳にしては頑張っているほうじゃないかと思います。結構忙しくしてますよ」

 と、うまく仕事をシフトできたことに満足げだ。

 さて、あなたなら何のスキルをマイクロ化する?

(編集部・高橋有紀)

※AERA 2023年3月20日号より抜粋