※写真はイメージです (GettyImages)
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 このところ減る傾向にあった株主優待制度だが、新たに導入したり、拡充したりする動きも目立つ。株主優待は、個人投資家にとって投資するうえでの楽しみの一つ。最近、優待制度を取り入れた会社の狙いや背景を探った。

【株主優待制度の新設を発表した主な会社、優待内容などはコチラ】

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 株主優待は上場企業が行う株主への還元策の一つ。保有する株式数や期間など企業が決めた条件を満たす株主に対し、自社の商品や金券などを贈る制度だ。株価の動きや配当などとともに、銘柄選びの参考にする投資家は少なくない。

 だが最近は株主優待をやめる会社が増えていた。「株主への公平な利益還元のため」といった理由だ。優待は機関投資家や外国人株主にとってメリットが得られにくい。大和インベスター・リレーションズによると、全上場企業のうち、株主優待を実施する企業の割合は2022年9月末時点で37.2%と、前の年の37.9%から0.7ポイント減った。3年連続の減少は過去30年で初めてという。

 同社営業サポートグループ長の濱口政己さんは「今はこのまま減り続けるか、増加に転じるか、どちらとも言えない状況」と話す。

「株主優待をする企業は昨年9月末時点の1463社から今年3月初めの1480社前後まで、足元では実は少し増えています。廃止する会社数は依然多い一方、新たに実施する企業がこれを上回っています」

 株主数や流通株式数などを増やしたい企業にとって、株主優待は投資家の注目を集めるのに有力な手段だ。例えば、東京証券取引所で最上位の「プライム市場」に上場していながら、まだ基準を満たしていない会社などが流動性を高めるため、新たに優待制度を導入する動きが増えるかもしれない。

 昨秋以降に株主優待制度を新設した主な銘柄の一例を挙げよう。大手菓子メーカーの森永製菓は、6カ月以上の継続保有を条件に、保有期間や株数に応じて優待内容がグレードアップする自社製品の詰め合わせか、チョコの原料であるカカオの生産国で、教育環境改善や児童労働の予防といった取り組みをする国際支援団体への同額分の寄付が選べる優待制度を用意した。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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