自宅のリビングで執筆する村井さんの横には真っ黒なラブラドール・レトリバーのハリーが寄り添う。息抜きのネットショッピングで、この日はチロルチョコを230個購入した。書店に行くのも大好きで、背負わないと持てないくらい本を買いこむ。
日々楽しそうに過ごす村井さんだが、過酷な双子の子育てを経験し、兄の突然死、義理の親の介護にも向き合ってきた。
「波瀾万丈に見えるかもしれませんが、私が特別なわけではなく、誰の人生にも同じようなことが起きていると思います。あなたと同じようにアップダウンをしている人がここにいますよ、という気持ちです」
では全編に通底する明るさはどこからくるのか。
「7歳と47歳のときに心臓の手術をして、人間いつどうなるかわからないと常に感じてきました。『死んでいないだけでもいい』がスタート地点だからかもしれません」
(仲宇佐ゆり)
※週刊朝日 2023年3月24日号