「コミュニケーション能力」とは、一体どのような能力なのだろうか。その疑問に、宇宙飛行士の仕事に焦点を当てた本書が明確に答えてくれる。
 常に危険と隣り合わせの「究極の職場」で働く宇宙飛行士にとって「コミュニケーション能力」は不可欠だ。「自分の言いたいことを正確に伝え、相手の言うことを正確に理解すること」を基本に、信頼を得るための自己開示や、ストレスを笑いに変えるユーモアの重要性を著者は指摘する。また、宇宙飛行士には知力、体力、リーダーシップ、フォロワーシップ、状況判断力なども求められる。これらの能力がどのように選抜試験で見極められ、訓練で伸ばされ、宇宙で発揮されるのか、という過程が綿密な取材によって明らかにされる。
 著者は20年以上、宇宙関連の取材を続ける“宇宙ライター”。日本人初の船長となった若田光一さんはじめ、国内外の宇宙飛行士たちの素顔も興味深い。「スーパーマン」と思われがちだが、努力の人であることが分かる。彼らの「仕事力」から学べることは多い。

週刊朝日 2014年5月9日-16日号