■合わなければ恋愛不要
マッチングアプリ運営会社などが参画する、一般社団法人結婚・婚活応援プロジェクト(MSPJ)によると、コロナ前からお見合いや社内恋愛の減少などが理由でアプリの利用者は増加傾向にあったが、コロナ禍でオフラインの出会いが減少し、寂しさを感じた人が多く、市場の成長が加速したという。また意識の変化も要因の一つと見ている。
「『ペアーズ』(エウレカ運営)が20代にインタビュー調査を行ったところ、『本当に自分に合う人でなければ無理に恋愛はしなくてもよい』『趣味などで楽しんでいるし忙しいので恋愛は今はしなくてよい』といった意見があったそうです。また、『恋愛関係に発展することで、学校や職場などの人間関係、グループ間の良好な関係を崩したくない』という意見もあります。アプリは、日常生活のリアルな人間関係だけでは出会えないような、趣味・嗜好が合うお相手を探すことができるため、若者のニーズにも応えることができると考えています」(MSPJ)
遠くにいる「自分に合った人」を効率よく探し出せるアプリ。相手が既婚者ではないか、体目的ではないか、ネットワークビジネスの勧誘を受けるのではないか、といった不安を持つ人も少なくないが、「MSPJの参画企業では常時監視や身分証明書による本人確認などを行い、安全対策に取り組んでいます」(MSPJ)という。
では、アプリは本当に「タイパがいい」のか。交際に至った時点で退会するサービスのため、結婚までの期間の正確なデータはないが、入会してから恋人ができて退会するまでの平均期間を一部サービスが公表している。ペアーズは平均3カ月、タップル(タップル運営)は、退会者の73.1%が3カ月以内となっている。
■アプリ疲れで相談所へ
K-POPアイドルファンの40代女性は、韓国イケメンを探してアプリを始めた。好みにドンピシャの男性から連絡がきてやりとりを続けたが、ある時、高級ブランド店でショッピングを楽しむ写真が送られてきて「投資に興味ある?」というメッセージが届いた。その後も3人の男性から同様の勧誘を受け、成果をあげられないまま、婚活アプリを使い続けている。
ネットでは「マッチングアプリ疲れ」という言葉をよく目にする。『結婚の技術』(中央公論新社)などの著書がある、結婚相談所マリーミー代表で恋愛・婚活アドバイザーの植草美幸さんは次のように語る。
「『アプリを使い続けても成果が出ない』と、結婚相談所に駆け込む方が増えています。その多くは、自己分析や結婚に求めるものを絞り込むことができていない。結婚相談所ではカウンセリングを通じてその方が結婚に求めているものを分析し結婚に導きます」(植草さん)
出会いも、その前の自己分析もアウトソーシングすることでタイパを高められる婚活サービス充実の時代、タイパ最悪の恋愛はもういらない!?(ライター・安楽由紀子)
※AERA 2023年3月20日号