『The Fame―デラックス・エディション―(DVD付)』Lady Gaga
『The Fame―デラックス・エディション―(DVD付)』Lady Gaga
この記事の写真をすべて見る
『Monster Ball Tour at Madison Square Garden[Blu-ray]』Lady Gaga
『Monster Ball Tour at Madison Square Garden[Blu-ray]』Lady Gaga
『Easy to Love』ROBERTA GAMBARINI
『Easy to Love』ROBERTA GAMBARINI

 人生とは不思議なものだ、と思う。
 ローリング・ストーンズが元気に日本ライヴを終えたと思ったら、オーストラリアとニュージーランドの公演が突然、延期になってしまった。ポール・マッカートニーが来日して、次の来日は何年後だろう? などと考えていたら、5月にまた来日するという。

 イベントは、人間が計画し作り上げるものだけれど、それとは別に、人智を超えた力が働いているような気もしてくる。世紀のスーパースターといえど、そんな力から逃れることはできないのかもしれない。

 ポールもストーンズの面々も、70歳すぎの「おじいちゃん」と呼んでもおかしくない年齢の人たちである。そして彼らの人生を振り返ると、さまざまな出来事があり、歴史を作っていたことがわかる。スーパースターだって、楽なことばかりじゃなかったんだという現実がある。そんな素晴らしいアーティストたちと同時代に生きることができて、結構、幸福なんじゃないかと思う。

 ところで、新しい若いアーティストには興味がないのかというと、そういうわけではない。AKBだって、モモクロだって、パフュームだって好きだし。キャリー・パミュ・パミュもCDを買った。原田和典さんに連れられて、アップ・アップ・ガールズ(仮)のライヴも楽しんでいる。日本のアーティストだけではない。ビヨンセのライヴにも行った。ビヨンセを見たのは2009年のさいたまアリーナだから、あれからもう5年も経っているのか。新人は、あっという間にベテランになっていく。

 こう書いてきて、女性ばかりであることに気がついた。
 このコラムで取り上げたアーティストは、数でいえば男性のほうが多いような気がするが、現在は女性アーティストのほうが元気だということなのだろうか。現実社会でも、女性のほうが元気なような気がするが。

 さて、最近ライヴを見てみたいと思っているアーティストは何人かいるが、願っていたのに見逃してしまった女性ヴォーカリストがいた。
 イタリアのジャズ・ヴォーカリスト、ロバータ・ガンバリーニだ。気がついたら、今年2014年2月に公演をして、帰ってしまっていた。

 このような企画で文章を書かせていただいているので、ライヴ情報はまめにチェックしているつもりなのだが、こんなふうに抜けてしまうことがある。
 ここ最近、新譜を待っていて出れば必ず購入するアーティストの一人が、ロバータ・ガンバリーニなのだ。

 英語のアルバムを4枚ほどリリースしている。4枚とも購入した。特に、デビュー作の『イージー・トゥ・ラヴ』をはじめて聴いた時には、その声にやられてしまった。こういうのを、ひとめぼれというのだろうか。ま、声だから、ひと聴きぼれ、となるのだろうか。フィル・スペクターのいたテディ・ベアのデビュー曲《会ったとたんに一目惚れ》といった感じだ。

 こんなに好きな声というのは、アン・バートン以来だろうか。いや、サラ・マクラクラン以来だろうか。だめだ、こんなところで何人もあげてしまっては、逆効果になってしまう。
 たくさん名前を挙げてしまうのは、この文章を読んでくれた方の何人かでも、わたしが好きなアーティストと出会って、共有していただけたなら、うれしいとの思いからだ。 動画検索でもよいので、聴いてみてほしい。

 それにしても、音楽や声の素晴らしさを言葉で表現するというのはむずかしい。
 サラ・マクラクランの《エンジェル》が挿入歌として使われている、映画『ベルリン・天使の詩』のリメイク『シティ・オブ・エンジェル』のなかで、食べ物を味わうことができない天使が、ヘミングウェイの食べ物の表現を読みながら、味や食感を想像する場面があるが、わたしはまだこわくて、音楽を言葉で表現することができない。わたしの好きな音楽を、あなたにも聴いてみてほしい、と願うだけだ。

 さて、今回もう一人紹介したいのは、レディ・ガガだ。
 この人もデビューの時からファンになり、ライヴを見たいと思っていた。
 1986年生まれのレディ・ガガが、2008年に発表したデビュー・アルバム『ザ・フェイム』が大ヒットした。しかし、わたしが彼女を知ったのは、CDではなくプロモーション・ビデオだった。テレビから出てきた彼女は、今まで見たこともないような出で立ちで、覚えやすいキャッチーなリフのダンス・ミュージックを歌って踊っていた。

 今までのわたしの経験では、異様な出で立ちのアーティストは、基本的にマニアックなファンがつくものであった。
 たとえば、ニナ・ハーゲンやクラウス・ノミ、クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウンなど、ロック史上に残る異形のロッカーだと思うが、残念ながら大衆的人気を得たとは思えない。興味のある人は、それぞれのアーティストを検索してほしい。「画像」で検索するのも楽しいと思う。一応、参考のために一例を挙げれば、アーサー・ブラウンは、頭に火をつけて歌って踊っていた。

 しかし、ガガは一般的な人気まで得てしまった。街を歩くおばちゃんに、「ガガちゃん、おもしろいわね」などと言わせてしまっているのだ。震災後の彼女の行動や発言も大きく影響しているのだろう。それから、楽曲のわかりやすさというのもあると思う。誰が聞いても覚えやすく、ノリやすいのだ。しかしその裏にひねりを加えているので、マニアも納得させてしまうのだろう。

 レディー・ガガが8月に単独来日公演「ArtRave: The ARTPOP Ball」ツアーを行うことが決定した。
 今回のツアーは3月~11月の間、日本を含む23カ国で開催され、世界規模のツアーとなる。日本好きと言われるガガの来日はこれで8回目、単独公演は3度目となる。

 わたしは10数年前、レゲエの野外ライヴでどしゃ降りにあって以来、できるだけ野外公演は避けるようにしてきた。しかし今度のレディ・ガガは、過去のトラウマを抑えて、それでもやはり見たいと思わせてくれた。こんなおじさんでもワクワクさせてくれるようなアーティストが、今後もたくさん出てきてくれることを願って、しめの言葉とさせていただく。[次回4/16(水)更新予定]

■「レディ・ガガ」公演情報は、こちら
http://www.ladygaga-japantour2014.com/

[AERA最新号はこちら]