かつて"高嶺の花"というイメージのあった「ラグジュアリーブランド」に、世界的な変化が起こっています。
これまではエクスクルーシブ(選ばれた人向け)であることに価値を見出していましたが、人々の消費意識の変化を受けて、生活者との新しいコミュニケーションの方法を模索しているのです。
例えば、ファッションショーの開放。ごく限定された業界関係者やセレブしか座ることのできなかったフロントローに一般人のブロガーが招待されたり、iPhoneによるオンライン中継が行われたりしています。ドルチェ&ガッバーナやバーバリーがこの分野の先駆者としては有名です。
また、ビジネスの透明化も進んでいます。これまでは秘伝のように伝えられてきた職人技を「学校」というかたちで公開したり、不透明だった素材調達の手段や流通過程をオープンにしたりすることで、「権威あるブランド」から「信頼できるブランド」へとブランディングの中身をシフトし始めているのです。
そうしたラグジュアリーブランドの変化を取り上げたのが、雑誌『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)オンライン版の連載「ラグジュアリーは変われるか?」です。
ファッション、高級車、ホテル、ジュエリーなど、高級品市場の現在について考察した同連載では、ソーシャルメディアの台頭がブランドのコミュニケーションのあり方を決定的に変えたとまとめられています。
かつて、ラグジュアリーブランドに関する「評判」は、実際に商品を購入した一部の人にしかわからないものでした。しかし、ソーシャルメディア上に口コミがあふれるようになった現在、ラグジュアリーブランドがどんなに素敵な広告を展開し、ブランドイメージをコントロールしようとしても、誰もが自分の意見を自由に書き込めるため、良い評判も悪い評判も等しくオンライン上に拡散していきます。
つまり、ラグジュアリーブランドには「イメージ」が重要であるにもかかわらず、それをコントロールできなくなってしまったのです。
残された手段は、こうした意見を無視するか、それとも積極的に関わっていくか。都合の良い部分だけ取り入れようとしても、中途半端な姿勢はかえって見抜かれてしまい、よりブランドの価値を毀損することになりかねません。それほど、今どきの生活者は消費に対して厳しい眼差しで向き合っています。
ラグジュアリーブランドの現在を見ていくと、どうやら、各ブランドは「積極的に関わる」という方向に舵を切り始めていることがわかってきました。そこで見えてきた課題は高級品市場に限らず、生活者との密な結びつきを模索するすべての企業にとっても共通しています。なぜなら、ラグジュアリーブランドほど「人が何に価値を見出すか」ということを考え続けてきた業界はないからです。
変わり始めたラグジュアリーブランドの未来について問うことは、顧客が消費に何を求めているか知ることにつながる――。そんな視点のもと、DHBR誌は高級品市場をテーマにした特別セミナーを3月25日に代官山で開催します。
当日はコンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニーのゴヴァース健二氏による現代の高級品市場をめぐる基調講演のほか、コンデナスト・パブリケーションズ・ジャパン元社長の斎藤和弘氏らがラグジュアリーブランドの広告コミュニケーションのあり方について議論。
さらに、ラグジュアリービジネスに取り組むブランド各社も登場。高級車のレクサス、高級百貨店のバーニーズNY、そして、今年4月に日本初進出を果たす外資系ホテルブランドのアンダーズ東京の総支配人がパネルディスカッションを行い、普段はあまり聞くことのできないラグジュアリービジネスの方法論について語り合います。
ソーシャルメディア時代にラグジュアリーブランドは何を考え、どんな施策を行っているのか。コミュニケーション戦略に日々頭を悩ませる企業のPR担当者やマーケティング担当者にとっては、アイデアの参考になる話が展開されそうです。
【関連リンク】
変貌するラグジュアリービジネス ソーシャル時代に顧客は何を求めているか
http://drc.diamond.co.jp/seminar/past/20140325/
ハーバード・ビジネス・レビュー 連載「ラグジュアリーは変われるか?」
http://www.dhbr.net/category/oyamada