ここ数年で、アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)・ADHD(注意欠如・多動性障害)・LD(学習障害)といった言葉が、新聞やテレビに登場することも多くなり、認知度は格段に向上してきました。その一方で、「場面緘黙(ばめんかんもく)」という、あまり知られていない症状に悩む子供達が存在するのをご存知でしょうか。
場面緘黙とは、家庭などリラックスした場所ではおしゃべりできるのに、幼稚園・保育園・学校などの社会的な状況で声を出したり話したりすることができない状態のこと。医学用語では「選択性緘黙」と言い、不安障害の一種と考えられています。
話せないと言うと「それって自閉症のこと?」と思いがちです。確かに、場面緘黙の人の中には、広汎性発達障害や自閉症スペクトラム障害など他の障害を併せ持つ人も存在します。ですが、場面緘黙の人は、ほとんどの場合、言語能力や知的能力に問題はありません。家では話せるのに学校に行くとしゃべれないといったように「人・場所・活動」の3つの 要素によって状況が左右される場合が多いそうです。
極度の不安や緊張のために、ある特定の場面で話せなくなってしまう子供達は、大人しい子・はにかみ屋と思われてしまい、学校現場では問題視されず、見過ごされてしまうこともあるのだとか。「名称は知っているけど、支援の仕方はわからない」という先生も多いと言います。
そんな場面緘黙という特別な支援が必要な子供・当事者達に対して、本書『どうして声が出ないの?-マンガでわかる場面緘黙-』は、前半はマンガでわかりやすく説明、後半は「不安度チェックシート」など、実践的で具体的な支援方法を提示しています。
実は、著者・はやしみこさん自身も、場面緘黙の子供をもつ母親でした。「僕はどうして声が出ないの?」と、息子さんに泣きながら聞かれたとき、答えることができずに一緒に泣いてしまったそうです。場面緘黙に対応できる支援機関や専門家も少なく、学校の先生も具体的にどうしたらいいかわからない、なかなか支援の手が届かない状況の中、子供に伝えることが出来ないだろうか?との思いから、この本の出版にこぎ着けました。
話したいのに話せない、場面緘黙という困難さを抱える当事者本人はもちろん、悩んでいる保護者への共感と励ましが込められた一冊です。
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